ホテルのセルフチェックインとは?メリット・デメリットや導入の手順を紹介

公開日 (更新日 2024.01.17)

デジタル戦略を学びたい方

業務の効率化を目的に、セルフチェックインを導入するホテルが増えています。

セルフチェックインを導入することには、さまざまなメリットがあります。しかし特有のデメリットもあるため、双方をよく知った上で検討しましょう。

この記事では、セルフチェックインの導入方法について解説します。セルフチェックインシステムの導入を検討している経営者は、ぜひ参考にして下さい。

ホテルのセルフチェックインとは

まずは、ホテルのセルフチェックインの概要について解説します。

宿泊客自身にチェックイン・チェックアウトをしてもらうシステム

セルフチェックインとは、フロントでスタッフが対応するかわりに、利用者が専用の機械を使って自分自身でチェックイン・チェックアウトを行うことです。

セルフチェックインの方法には、「事前に発行されたQRコードを機械に読み取らせる」「ホテルに設置された機械やタブレットなどの端末を使う」など、さまざまな方法があります。また、セルフチェックイン単独で運用する場合もあれば、他のシステムと連携した利用ができる場合もあります。

専用の機器やアプリを利用する

セルフチェックインを行う方法としては、以下の2つが代表的です。

  • 自動チェックイン機などホテルに備え付けの専用の機械で行う
  • 利用者が自分のスマートフォンにインストールしたアプリで行う

2023年現在は前者の専用の機械で行う方法が主流ですが、アプリを使用する方法も増えてきています。機械でセルフチェックインを行う場合は、ホテル内に設置されている機械やタブレットなどを利用者が操作してチェックイン・チェックアウトを行います。

自動チェックイン機にも、現金やクレジットカードなどによる支払い機能(自動精算機能)を搭載しているものと、支払い機能が付いていないものとがあります。現在は、決済機能付きのものが多数です。

また、アプリでセルフチェックインを行う場合は、ホテルのオリジナルアプリを開発するケースが多くなっています。

民泊など小規模な宿泊施設でも活用されている

セルフチェックインを導入しているホテルは、大規模なホテルチェーンだけではありません。ゲストハウスや民泊、ペンションなど、規模の小さいホテルでもセルフチェックインを導入しているところが増えてきています。

また、こうした小規模な宿泊施設向けのセルフチェックインシステムを提供している企業も出てきています。

セルフチェックインを取り入れたホテルの事例

ここでは、セルフチェックインを導入しているホテルの事例を3つ紹介します。

JRホテルメンバーズ|ルームキーとしても使えるアプリを導入

全国のJR系ホテルの会員プログラム『JRホテルメンバーズ』は、2021年1月から専用アプリ「JRホテルメンバーズアプリ」を導入しています。

宿泊カードへの署名は必要ですが、スマートフォンをホテルの端末にタッチするだけで手軽にチェックインができます。また、一部のホテルでは利用者のスマートフォンをルームキーとして使うことも可能です。

JRホテルメンバーズの既存会員はアプリをダウンロードしてログインするだけですぐ使える他、新規会員登録もアプリ上で可能と、利便性も追求しています。その他、アプリ上で宿泊予約もでき、ホテルへのアクセスや周辺の観光情報なども確認可能です。

変なホテル|無人のセルフチェックイン体制でホテル運営も効率化

長崎県にある『変なホテル』では、セルフチェックイン機を導入して完全無人でのチェックイン・チェックアウト対応を実現しています。

フロントには、スタッフはいません。案内ロボットによる説明に従って利用者がタッチパネルを操作し、チェックイン・チェックアウトを行うスタイルです。当初は決済機能のないシステムを採用する予定でしたが、「現金で払いたい」など幅広いニーズへの対応を考慮し、自動精算機能付きのものを導入しました。

システムによりチェックイン・チェックアウトをスタッフ間ですぐに共有できるため、次の利用者を迎えるための準備もスムーズにできる様になっています。

アパホテル|QRコードで完全非対面でのチェックインを可能に

全国に701ホテルを展開する『アパホテル』では、自社でチェックイン・チェックアウト専用アプリを開発して導入・運用しています。アプリで予約し、アプリチェックイン専用機にQRコードをかざすとルームキーまたはルームキー引換証が発行されるしくみです。

精算もチェックインと同時に行いますが、事前決済が済んでいる場合は『当日オートチェックイン』もできます。また、アプリがなくてもWebサイト上でチェックインできるサービスも開始しています。

セルフチェックインのメリット

ホテルでセルフチェックインを導入すると、以下の通りスタッフ・利用者の双方にメリットがあります。

  • スタッフの業務効率化や人件費削減に繋がる
  • 利用者はスムーズにチェックインできる

それぞれについて解説します。

スタッフの業務効率化や人件費削減に繋がる

セルフチェックインを導入すれば、チェックイン・チェックアウト対応にスタッフを配置する必要がなくなり、他のフロント業務に集中させられます。金銭授受のミスや連絡事項の確認ミスといった、ヒューマンエラーの防止にも繋がるでしょう。

加えて、セルフチェックインの導入は人手不足のホテルにも効果的です。コロナ禍ではスタッフの流出に悩まされたホテルが多くありましたが、セルフチェックインを導入しておけば、そういったケースへの耐性が付く可能性があります。

利用者はスムーズにチェックインできる

セルフチェックインの利用者側のメリットは、フロントで待たされず、手軽にチェックインできることです。

利用者の中には、到着後は早くチェックインを済ませて部屋で休みたいと思う人も多く、フロントで順番を待つことが大きなストレスになりかねません。セルフチェックインであれば利用者を待たせずに部屋を案内でき、満足度向上にも繋がります。

セルフチェックインを導入したホテルの利用者からは「すぐに手続きが終わって便利」「混雑時もスムーズにチェックインできた」といった口コミが寄せられています。

セルフチェックインのデメリットと対策

ホテルへのセルフチェックイン導入には、スタッフ・利用者双方のデメリットも存在します。

  • 導入には手間と費用が掛かる
  • デジタルに不慣れな利用者にはストレス
  • 故障や不具合への対応はスタッフが行う必要がある

それぞれについて以下で解説します。

導入には手間と費用が掛かる

セルフチェックインを導入するには、機械やシステムの選定から始める必要があります。セルフチェックイン機やシステムは多数展開されているため、自社に合うものを選ぶのは容易ではありません。

また、導入後もランニングコストが掛かります。加えてこれまでシリンダーキーを使っていたホテルが鍵の受け渡しも自動化するなら、全客室のカギを交換する費用も必要です。

まずは、どういった機能が必要かを絞り込み、導入・運用に必要な費用を算出してから導入可否を決定すると良いでしょう。導入にあたって『IT導入補助金』『事業再構築補助金』『小規模事業者持続化補助金』などの制度を利用できるシステムもあるため、確認して下さい。

デジタルに不慣れな利用者にはストレス

機械やスマートフォンの操作に不慣れな利用者にとっては、セルフチェックインが難しい場合もあります。チェックインの方法をセルフチェックインのみにしてしまうと、利用者に大きな負担をかけてしまうかもしれません。

完全に無人化はせずにフロントに最低限の人員を配置しておいたり、スタッフに繋がる内線を設置したりといった対策も必要です。

故障や不具合への対応はスタッフが行う必要がある

セルフチェックイン機の故障やシステムの不具合が発生した場合は、スタッフによる対応が必要です。例えば、ルームキーやレシート用紙が切れるといったケースも考えられます。

また、精算機能付きのものを導入する場合、釣り銭不足への対応も想定すべきです。不具合が発生してもすぐに対応できる様に、近くにスタッフを配置するなどの対策をしておくと良いでしょう。

セルフチェックインシステム導入の手順

ホテルにセルフチェックインを導入する手順は次の4ステップです。

  1. 導入するセルフチェックインシステムを決める
  2. メーカーに問い合わせをして見積もりをもらう
  3. 契約を締結してシステムを導入する
  4. フロントスタッフの教育をして運用する

それぞれについて以下で解説します。

導入するセルフチェックインシステムを決める

まず、導入するセルフチェックイン機・システムの選定にあたって複数の業者に問い合わせを行い、どの機械・システムで何ができるか・できないかを把握しましょう。既にPMSを導入している場合は、PMSとセルフチェックインシステムとの連携のしやすさも重要です。

費用を抑えたいなら、既存のPMSメーカーにセルフチェックインシステムへの対応について問い合わせてみる方法もあります。加えて、外国人利用者が多い場合は、多言語対応の可否もポイントになります。

メーカーに問い合わせをして見積もりをもらう

導入する機械・システムを絞り込めたら、メーカーに問い合わせをして見積もりを出してもらいましょう。メーカーの中には、オンラインデモの機会提供や導入費用・運用費用のシミュレーションページを設けている場合もあり、そちらを参考にするのもおすすめです。

加えて、導入を考えているシステムに何らかの補助金が利用できるかどうかもメーカーに確認すると良いでしょう。

契約を締結してシステムを導入する

導入する機械・システムが決定したらメーカーと契約し、ホテルに導入します。

専用のチェックイン機や端末を使うタイプにする場合は、機器の設置工事が必要になるケースもあります。設置工事はすぐ終わる場合もありますが、求める機能やそれに応じた開発、PMSとの接続なども必要なため、導入完了までトータルで数カ月は掛かると見積もっておきましょう。

アプリを使う場合は、さらに数カ月以上かけての開発が必要です。ただし、既存アプリを簡単に作れるサービスもあるため、そういったものを利用する方法もあります。

フロントスタッフの教育をして運用する

セルフチェックイン機・システムを導入後も、スタッフで対応すべき業務が存在する場合もあります。また、故障や不具合が生じた際の対応にも備えておかなければなりません。

そのため、導入するだけでなく、スタッフが操作方法を覚えて、ひととおりの機能を把握し、有事の際に対応できる様にしておくことが重要です。セルフチェックインシステムの会社によっては、操作方法についてスタッフ教育をしてくれるところもあります。

まとめ セルフチェックインはスタッフにも利用者にもメリットがある

セルフチェックインはスタッフと利用者双方にメリットのあるシステムです。業務の効率化や顧客満足度向上を考えているなら、一度検討してみてはいかがでしょうか。
導入するセルフチェックインシステムの選定に悩んだら、ホテルの経営方法も含めてコンサルタントに相談するのも1つの方法です。株式会社「宿力」は、ホテルのWebマーケティングに特化したコンサルティングサービスを行っています。ぜひ、お気軽にお問い合わせ下さい。