グランピングの経営の始め方|具体的な手順や費用、失敗しないコツを解説
公開日 (更新日 2024.02.29)

グランピングとは「グラマラス(魅惑的な)」と「キャンピング」を組み合わせた造語で、アウトドアでありながらホテル並みのサービスを受けられる施設を指します。
2010年代に入って急速に人気が出た宿泊施設ですが、個人でも経営しやすいことから経営に乗り出したい方も多いでしょう。グランピング経営を始める手順や、注意点などを解説します。
目次
グランピング経営を始める手順

グランピングの潜在市場規模は2,000億円とも言われ、まだまだ伸びていく業界だと考えられます。グランピングの経営を開始して成功させるには、以下の様な手順で進めると良いでしょう。
1.開業するエリアを考えて土地を探す
グランピング事業を始めるエリアに目星を付け、必要な土地を探しましょう。この時、以下の点に注目して下さい。
- 都市部からのアクセスの良さ
- 景観の良さ(夜景が見える、海が近い、朝日・夕日や星空がきれい)
- 土地の広さ
グランピングは、キャンプよりも手軽に利用できる点を魅力に感じている人も多く、市街地から車で2時間以内に行ける場所にある立地が理想的とされています。それ以上遠くなる場合には、サービスを充実させて特徴を出しましょう。
土地はある程度の広さがあると独自のサービスが展開しやすくなりますが、広過ぎると管理が難しくなるなど、良いことばかりではありません。小さい規模の方が丁寧なサービスができる場合もあるので、ターゲット層に合った施設が作れそうな場所を探すことが重要です。
幾つかのグランピング施設に見学に行き、作りたい施設のイメージを固めると良いでしょう。ただし、選ぶ土地によっては市街化調整区域に該当し、建物が建築できないこともあるので注意して確認して下さい。
2.ターゲット層やコンセプトを固める
土地が見つかったら、どんな層を狙ったグランピング経営を行うのかを固めましょう。ファミリー層向けと若者グループ向けとでは、求められる立地や設備が変わってきます。競合施設が近くにある場合は、差別化できる要素も必要です。
差別化の方法としては以下の様なものが考えられます。
- インテリアに凝っておしゃれな雰囲気を出す
- 雨天でも楽しめる施設にする
- 非日常を感じられるサービスを用意する
基本的にグランピングをする人はキャンパーと異なり、「アウトドアを楽しみつつも、快適に手軽に過ごしたい」という人が中心です。その点を考えながらコンセプトを固めて下さい。
3.事業計画書を作成して自治体に相談する
続いて、自治体から建設の許可を受けるために、事業計画書を作成しましょう。グランピング施設の多くは旅館業法の『簡易宿所』に該当するため、開業には自治体からの許可が必要です。
銀行の融資を受ける際も、事業計画書の提出が求められます。以下の様な点についてまとめた上で、自治体や銀行に相談に行きましょう。
- 開業する施設の規模
- 開業する場所(立地)
- 提供する飲食物やサービス
- 予想される売上や経費
尚、グランピング事業を始めるにあたって、以下の様な補助金・助成金が活用できる可能性があります。
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
申請条件や申込期限などは補助金によって異なるため、細かく確認しましょう。
4.旅館業営業許可申請書を提出して建設工事に着工する
開業が許可されたら、自治体に『旅館業営業許可申請書』など必要書類を提出し、土地を入手して工事を進めます。
グランピング施設の設営時は旅館業法だけではなく、以下の様な法律も守らなければなりません。
- 建築基準法
- 消防法
- 都市計画法
- 水質汚濁防止法
- 自然公園法
加えて、農地を利用する場合は農地転用の手続きも必要です。もし違法な建物を建ててしまった場合は、自己負担で撤去や建て直しが必要になります。
5.備品の購入などの開業準備を進める
建物の完成に合わせて、必要な備品や家具を購入します。Webサイトの作成、SNSや広告による告知・広報なども忘れずに行いましょう。
スタッフが複数人必要な場合には、人材を確保するのはもちろん、運営マニュアルの作成もおすすめします。オープン前にマニュアルを基にした研修を行い、安定したサービスを提供できるよう準備しておかなければなりません。
グランピング経営に必要なコストはいくら?

前述の通り、グランピング施設は他の宿泊施設に比べると初期費用・ランニングコスト共に安価に抑えやすい点が特徴です。しかし、そのためにはある程度の工夫も必要になります。
初期費用は800万円からが目安
2023年8月現在、グランピング用ドームテントの金額は1棟200万円程が目安です。ただし耐久性や冷暖房設備の有無によっては、数十万円から購入できる場合もあるため、初期費用も800万円前後で収まる可能性があります。
ドームテント以外でグランピング経営に必要な初期費用は、開業するエリアや作る施設などにより大きく変動します。また。客室の他にどの様な施設を建てるか、どこで開業するかによっても費用は変わります。水道・電気などのインフラが整っていない場所に開業する場合は、その引き込み工事に膨大な金額が掛かるケースもあるでしょう。
また、近年の材料費の高騰や、グランピング人気により、初期費用も高額になってきています。現段階では比較的初期費用が安く済む形態ではありますが、今後も費用の変動がある可能性も高いため、状況は随時確認しましょう。具体的な金額を調べる場合は、複数の業者に見積もりを取るのをおすすめします。
ランニングコストは形態により変動する
ランニングコストとしては、電気代や水道代、人件費などがあります。これらの費用も施設により大きく変動するため、一概にいくらとは言えません。宿泊用のテントが増えれば、それだけランニングコストも掛かります。シャワールームを共用にするか、各部屋用を作るかによっても大きく変わります。
ランニングコストを抑えたい場合は固定費を減らし、経費の多くを変動費とすると良いでしょう。例えば「食事を提供しない」「清掃スタッフは常駐ではなく単発で業者に依頼する」などの工夫をするといったことです。
グランピング経営のメリット
グランピング経営にはさまざまなメリットがあります。ランニングコストや利益率などの面からグランピング経営を見ていきましょう。
初期費用やランニングコストが抑えやすい
グランピング経営の大きなメリットとしては、他の宿泊形態を運営するのに比べて、初期費用やランニングコストが抑えやすいという点が挙げられます。
建築費については上述の通りグランピングの建物は一棟1,000万円前後ですが、ホテルの場合は1棟建設するために数千万円〜数億円は掛かるとされます。
グランピングは幾つかのドームテントを用意し、管理棟とBBQができるテラスや炊事棟などがあれば運営可能です。ロビーや廊下の様な共用スペースが少ないことも、費用を抑えやすい理由の1つです。
利益率が高く安定した収益に期待できる
グランピング施設は初期費用やランニングコストを抑えやすい分、利益率が高いというメリットがあります。
宿泊業界は、全体的に利益率が低い業界だと言われています。しかし効率的な運営ができれば、グランピング施設の場合はそれ以上の割合を見込めるでしょう。安定した収益が見込めれば、より良いサービスの提供ができます。その点が評価されて人気が高くなれば、さらに多くの顧客を確保できるかもしれません。
一定の需要が見込める
グランピングは人気が高く、ある程度の需要が見込まれることも魅力的です。
一般社団法人全国グランピング協会によると、2020年時点でグランピング施設の数は全国で350軒以上に上ります。グランピングの認知が高まればさらに市場が広がると期待されており、一説では潜在市場規模は2,000億~3,000億円と言われているのです。
グランピング施設の予約サイト『TAKIBI』が2023年4月、全国2,000人の男女に行った調査では、「グランピングはまだ経験したことはないものの興味はある」と回答した人の数は約60%に上っています。こうした点からも、グランピングには今後も一定の需要があると考えても良いでしょう。
参考:一般社団法人全国グランピング協会『グランピング業界の市場規模』
参考:TAKIBI『グランピング人気更に高まる!1年半で+14.7%!~TAKIBIによる調査実施~』
グランピング経営の注意点とデメリット
グランピングを経営するには、幾つかのデメリットもあります。どの様なデメリットがあるか事前に確認した上で、対策を考えてみて下さい。
開業までにさまざまな免許・許可の取得が必要
グランピングもホテルなどと同様、開業には多くの免許や許可の取得が必要です。前述の『旅館業営業許可』の他、提供するサービスによっては『飲食店営業許可』や『酒類販売業免許』なども取得しなければなりません。
ただし旅館やホテルとは異なり簡易宿所としての営業になるため、必要な免許は比較的少なくて済む場合もあります。例えば飲食の提供をしない場合、飲食店営業許可は不要です。
一口に「グランピング」といっても提供するサービスは異なるものです。どんなサービスを提供するかを考え、必要な免許・許可の確認をしていってはいかがでしょうか。
閑散期の対策が必須
グランピング施設も他の宿泊施設と同じ様に、繁忙期と閑散期があります。長期休暇がある季節は集客が見込めますが、1〜2月、6月といった宿泊業界の閑散期の集客には工夫が必要です。
また、グランピングは雨や雪、寒さに弱いため、その時期の稼働率を上げることが重要です。以下の様に、悪天候でも楽しく過ごせる工夫をしてみてはいかがでしょうか。
- 閑散期限定の特別なプランを提供する
- こたつやストーブなどの暖房器具を完備する
- 雪遊びのアクティビティを用意する
- 冬場は鍋などの温かい料理を用意する
- キッズルームなど、屋内で遊べるスペースを作る
オリジナリティのある取り組みができないか、ぜひいろいろとアイデアを出してみましょう。
閑散期については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にして下さい。
>> ホテル・旅館の閑散期はいつ?具体的な時期や対策から事例までを解説
グランピング経営で失敗しないために意識したいポイント

グランピング経営で成功するために、注意しておきたい点について紹介します。初期費用の節約や業務用システムの導入なども検討しながら、手堅い経営を意識しましょう。
初期費用を掛け過ぎない
最初は、開業に必要な最低限の設備を中心に揃えることを重視しましょう。
事業を始める時にあまりにも多額の初期費用をかけると、回収が困難になる可能性があります。おしゃれなインテリアにしたり、新しい設備を導入したりするのは、初期費用回収の目処が立ってからをおすすめします。
また、グランピングの経営には、固定費を抑えることで支出額も大きく変わります。リース費や減価償却費、人件費などを抑える工夫もして下さい。
情報発信を小まめに行う
グランピングの利用者は増えてきているものの、まだまだ「あまり理解できていない」という層も一定数いるものです。中には「グランピングという名前を聞いたことがある程度」「よく分からないので興味が持てない」といった声も聞かれます。
グランピングは2010年代頃から流行しだした宿泊施設のスタイルで、あらゆる層に浸透しているとは断言できない面もあります。
しかしこうした層にグランピングの概要や楽しみ方などを丁寧に伝えることで、将来的に顧客になる可能性があります。小まめな情報発信を行い、宿泊を促すのも良いでしょう。
グランピングの将来性や需要については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にして下さい。
>> グランピングの将来性や需要を徹底解説!経営するメリットや課題も紹介
Webサイトと予約システムを整える
顧客を確保するためにはWebサイトの工夫と、使いやすい予約システムの構築が重要です。
グランピングは個人運営の小規模なところも多く、Webサイトが整備されていなかったり、予約システムが分かりにくかったりする施設も見受けられます。しかし、それではせっかく宿泊を検討してもらえても、予約に結びつかないかもしれません。
予約受付は、Web上の宿泊施設予約サイトである「OTA」(Online Travel Agent)を活用する方法もあります。しかしOTAは部屋数や予約数などが多い程、上位表示されやすいシステムです。宿泊できる部屋が少ないグランピング施設は、なかなか上位表示に結びつきません。
見栄えが良く、予約しやすいWebサイトを自社で構築し、そこから集客を狙うのがおすすめです。
グランピング経営に関するQ&A
最後に、「グランピングは儲かるのか」「個人でも経営できるのか」といった、グランピング経営に関する疑問についてお答えします。
グランピング経営は儲かる?
前述の通りグランピングの経営では利益率を高めやすいため、うまく経営すれば多額の収入を得るチャンスもあるでしょう。
ただし近年はグランピング施設が増えてきていることもあり、単に開業するだけでは思う様に収益を出せない可能性もあります。立地を工夫する、コンセプトを個性的にするといった経営努力は必要になるでしょう。
また、上述の様な情報発信や予約システムの整備などの施策も検討してみて下さい。
グランピング経営は個人でもできる?
グランピング経営は個人でも可能で、実際に運営している人も多くいます。以下の様な理由もあり、企業でなくても十分準備から開業・運営まで対応が可能です。
- 初期費用が安い
- ランニングコストも抑えやすい
- 用意すべき施設がホテル・旅館に比べて小規模
- 客室数が少なく、管理しやすい
既に土地を持っていれば、土地活用の方法としても検討の価値はあるでしょう。ただしある程度の経営努力が必要にはなるため、きちんと収益を出したいなら本腰を入れて取り組んだ方が良いかもしれません。
まとめ 魅力の多いグランピング経営を始めよう

アウトドアブームもあり、グランピングも一定の需要があります。グランピング事業は初期費用を抑えやすいなどのメリットもあり、挑戦する価値は十分あるでしょう。失敗を防ぐためのポイントも意識しながら、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
グランピング開業後の収益性アップに重要なのは、予約システムを自社で用意することです。グランピング施設で多く導入されている「予約番」はスマホでも3ステップで予約が完了するスムーズさや、豊富なデザインが特徴です。グランピング経営を考える際は、ぜひ予約番の導入をご検討下さい。