ホテル管理システム(PMS)とは?導入するメリットと注意点も解説

公開日 (更新日 2024.06.12)

デジタル戦略を学びたい方

近年、コロナの波も収まり、宿泊業界はさらなる発展を遂げるといわれています。しかし、宿泊業界は人手不足など多くの課題を未だ抱えています。その課題の解決の糸口となるのがデジタルトランスフォーメーション(DX)化、中でもホテル管理システム(PMS)です。

そのPMSとは何か、なぜこれが今、宿泊業界にとって必要なのか、そして導入する際のメリットと注意点を詳しく解説していきます。

DX化とは何か?ホテル管理システム(PMS)の役割と重要性

DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術やデータを用いて業務・事業の改善を行うことを言います。DX化の概要とPMSの重要性について解説していきます。

DX化の重要性:2025年に待ち受ける問題

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術やデータを用いて業務プロセス、ビジネスモデル、さらには企業文化そのものを変革し、顧客に新たな価値を提供する取り組みのことを指します。

スイスのビジネススクール国際経営開発研究所の発表による世界デジタル競争力ランキングでは、日本は主要先進国7か国中6位であり、全体でも32位と先進国の中では遅れをとっているといえます。また、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、DX化が推進されず、国内企業の競争力が低下した場合、2025年以降に最大年間で約12兆円もの経済損失が発生すると予測されています。

参照:国際経営開発研究所「世界デジタル競争力ランキング2023」
参照:経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」

宿泊業界におけるDX化

宿泊業界においても、顧客満足度の向上や業務効率化を実現するため、DX化が急務とされています。観光庁が発表した観光立国推進基本計画によると持続可能な観光を実現するためにも、DX化による宿泊事業者における地域単位での予約情報や販売価格等の共有によるレベニューマネジメント等、事業者間・地域間のデータ連携の強化による広域での収益最大化に向けた取組の推進が提唱されています。

参照:観光立国推進基本計画

宿泊業界でのDX化は、オンライン予約システムの導入や自動チェックイン機能の実装など、顧客体験の向上に直接貢献しています。これらの技術を活用することで、宿泊予約の手間を大幅に削減し、チェックイン時の待ち時間を短縮するなど、顧客にとって快適な滞在体験を提供できるようになります。

また、業務効率の向上も大きなメリットであり、従業員はルーティンワークから解放され、より質の高いサービス提供に集中できるようになります。

宿泊業界のDX化については以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にして下さい。
>> ホテル業務のDXが急務!実施の手順を事例と共に解説

PMSによる宿泊業界DX化

ホテル管理システム(PMS)は、DXの中核をなす技術です。予約管理、客室管理、会計管理など、ホテル運営のあらゆる側面をデジタル化し、一元管理することで、運営の効率化と顧客サービスの質の向上を実現しています。PMSの導入は、ホテル業界におけるDXの推進力となっており、未来への大きな一歩と言えるでしょう。

ホテル管理システム(PMS)基礎知識

ホテル管理システム(PMS)とは

ホテル管理システム(Property Management System、以下PMS)とは、具体的には宿泊施設の運営を支援するソフトウェアシステムです。このシステムを活用することで、予約や顧客情報、客室の状況など、重要なデータを一元的に管理し、業務の効率化を図ることが可能になります。また、PMSは顧客満足度の向上にも貢献し、宿泊施設の収益向上に不可欠なツールとなっています。

PMSの重要性と業務:効率的な運営と顧客満足の二刀流

PMSは、宿泊業界DX化の核となる技術です。PMSにより、予約管理から客室割り当て、チェックイン・アウト処理、そして顧客データの分析まで、宿泊施設の日々の運営が一元的に管理されます。このシステムは、顧客満足度の向上、収益性の最適化、など市場の変動に迅速に対応する能力を宿泊施設にもたらします。

特に現代の競争が激しい宿泊業界において、PMSは従来の施設の運営をスムーズにし、顧客体験を向上させるための不可欠なツールです。効率的な運営と顧客満足の両方を達成するために、PMSの導入が今後の宿泊施設運営の鍵となります

ホテル管理システム(PMS)の機能

機能一覧:予約からバックオフィスまで

PMSは種類により多岐にわたる機能を備えており、下記が一部の機能となります。

予約管理予約の受付、変更、キャンセルの管理
フロントオフィス機能チェックイン、チェックアウトの手続き
客室管理客室の清掃状況、滞在中か空室中かなどの利用状況の管理
会計・帳簿管理売り上げの登録、レシート、領収書などの発行や管理
顧客関係管理(CRM)顧客のプロファイル、アレルギー、滞在履歴などデータの収集・分析
レポートと分析売上、予約状況、客室利用率などのデータを分析
在庫管理客室、会議室、その他施設の在庫管理
施設管理複数の施設を運営する場合に、各施設のデータをまとめて管理を行う機能

この記事では、以下の3つの機能について解説します。

  • 予約管理
  • 客室管理
  • 会計・帳簿管理

予約管理

予約管理はPMSの核となる機能の一つです。この機能により、オンライン予約やウォークインの顧客のデータを収集・管理することが可能になり、宿泊施設は予約状況を常に最新の状態に保ち、オーバーブッキングのリスクを低減します。

中にはサイトコントローラーと連携し、予約サイトと直接連携することで、よりリアルタイムな予約管理を可能にするPMSもあります。また、顧客満足度を高めることができます。

客室管理

客室管理機能は、空室状況の確認、部屋割り、清掃ステータスの管理など、客室運用に必要なあらゆる情報を一元管理します。これにより、チェックインとチェックアウトのプロセスをスムーズにし、顧客の待ち時間を短縮できます。

また、清掃スタッフとのコミュニケーションも効率化され、常に最高の客室状態を保つことが可能になります。

会計・帳簿管理機能

会計・帳簿管理機能は、宿泊料金、追加サービス料金、キャンセル料などの入金をリアルタイムで追跡・管理するため、現金の流れを正確に把握することができます。特に、複数の支払い方法をサポートすることで、顧客の利便性を高めつつ、会計処理の誤差を最小限に抑えることができます。また、従業員の手作業によるエラーを減らし、経理業務の時間を短縮します。

さらに、領収書発行システムを備えている場合、顧客が宿泊料金や追加サービスの支払いを行う際に、自動的に詳細を記載した領収書を生成し、即座に顧客に提供することが可能です。生成された領収書データは、収益管理や財務報告の精度向上に役立ちます

ホテル管理システム(PMS)導入のメリット

ここでは、PMSを導入することで得られるメリットを3つご紹介します。

  • 業務効率化
  • 顧客満足度向上
  • 収益の最適化

それぞれについて以下で解説します。

業務効率化

PMSは、ホテルの日々の運営業務を一元管理することで、業務の効率化を実現します。予約管理からチェックイン・チェックアウト、料金設定、客室管理に至るまで、PMSはこれら全てのプロセスを自動化し、スタッフの手作業を大幅に削減します。

これにより、スタッフは時間をより価値のある活動に充てることができます。例えば、ゲストとの対話やサービス品質の向上などです。また、オーバーブッキングのリスクを減らし、収益管理を最適化することも可能になります。業務効率化はコスト削減にも直結し、ホテルの収益性の向上に貢献します。

顧客満足度向上:パーソナライズサービスの実現

PMSを活用することで、ホテルはゲストによりパーソナライズされたサービスを提供することができます。PMSには、ゲストの過去の滞在記録や好みが保存されており、これらの情報を活用して、ゲスト一人ひとりに合わせたサービスを提供することが可能です。

例えば、過去に特定の部屋タイプを好んだり、特定のアメニティを利用したりしたゲストに対して、その情報を基に次回の滞在をより快適なものにすることができます。このようにして、ゲストの期待を超えるサービスを提供することで、顧客満足度を高め、リピーターの獲得や口コミによる新規顧客の獲得に繋げることができます

収益の最適化:データを活用した戦略的な運営

PMSは、ホテル運営に関わる貴重なデータを収集・分析するための強力なツールです。宿泊率、平均宿泊日数、収益などのKPI(重要業績評価指標)をリアルタイムで把握することができ、PMSに蓄積されたデータを基にマーケティングを行うことが可能です。

例えば、特定の期間に需要が低下する傾向が見られる特定の期間に、プロモーションや特別オファーを計画することで、需要を喚起し収益の最適化を図ることができます。また、顧客の滞在パターンや好みを分析することで、ターゲットマーケティングの精度を高めることも可能です。

宿泊施設に合ったホテル管理システム(PMS)選びのポイント

業務を効率化させ、戦略的なホテル運営を行うためには、自施設に合ったPMSを選定することが重要です。ここでは、PMSを選定する際に重要なポイントを、3つの宿泊施設に分けて解説します。

大型ホテル向けPMS:高度な機能性と拡張性を求めて

大型ホテルやリゾート施設では、複数のレストランやイベントスペース、スパなど、多岐にわたるサービスを提供しています。これらの施設には、高度な機能性と拡張性を備えたPMSが必要です。これにより、異なるサービス部門間での情報共有がスムーズになり、顧客への一貫したサービス提供が可能になります。また、大規模な施設運営における複雑な業務プロセスも効率化され、全体の運営管理が容易になります。

ビジネスホテル向けPMS:迅速かつ効率さが鍵

ビジネスホテルでは、迅速かつ効率的なチェックイン・チェックアウトプロセスや、高速な予約処理、客室管理、基本的な顧客データ管理などの機能を利用した高い稼働率の維持が重要です。また、ビジネスマンが多く利用することから法人管理、売掛管理や請求書払いへの対応が必要となります。さらに、グループ運営をしているビジネスホテルでは、複数の施設のデータをまとめて管理できる施設管理機能も、業務効率化に繋がります

旅館向けPMS:料理などの日本独自のニーズに応える

日本の旅館のPMSでは、料理に関する機能が重要であるといえます。顧客の好みやアレルギー情報の管理ができる機能が備えられている他、社員旅行などを多く受け入れる旅館では、大人数の宴会を手際よく進める機能も重要です。また、細やかなサービス提供が求められることもあるため、それを支援するPMSが必要です。日本独自の宿泊プランや料金体系に対応できる柔軟性も重要なポイントです。

ホテル管理システム(PMS)導入にあたっての注意点と対策

PMSは、業務効率化や顧客満足度の向上に貢献する重要なツールです。しかし、導入したからと言って必ずしも成果が出るとは限りません。ここでは、PMSを導入する際に考慮すべき注意点と、それに対する対策について解説します。

従業員の教育を十分に行う

PMSを導入する際には、従業員がシステムを効率的に使用できるようにするための十分なトレーニングが必要です。操作方法の習得だけでなく、PMSを活用して顧客満足度を高める方法や、問題発生時の対応策なども教育することが大切です。従業員がPMSを正しく、かつ積極的に使用することで、そのメリットを最大限に引き出すことができます。

自施設に合った最適なシステムを導入する

PMS選定時には、自施設のビジネスモデルや顧客層、提供しているサービスなどを綿密に分析し、それらのニーズに最も適したシステムを選ぶことが重要です。全てのPMSが全ての宿泊施設に適しているわけではないため、自施設にとって本当に価値をもたらしてくれる機能を持つPMSを選択することが成功の鍵です。また、将来のニーズにもこたえるために定期的なアップデートを行い、常に最新の機能を利用すること、緊急時に万全なサポートが整っているPMSを選ぶことも重要です。

また、先述したように、従業員のトレーニングも重要ですが、PMS自体の使いやすさも欠かせません。特にPMSはフロント業務を担う機能が多いため、使いやすいPMSを導入することで顧客の待ち時間を少なくし、顧客満足度を高めつつ回転率を高めることが重要です。複雑なものよりも、人種や年齢、PCなどのデバイス知識の差がない、直感的に操作できるものが良いでしょう。

ホテル管理システム(PMS)は、なぜ必要なのか

宿泊業界におけるPMSの導入は、運営の効率化、顧客サービスの質の向上、収益性の最適化など、多面的なメリットをもたらします。DX化の進展とともに、宿泊施設の競争力を高めるための重要なツールとして位置づけられています。しかし、PMSの導入と運用には正しい理解と計画が必要です。それには、従業員の教育、自施設に合ったシステムの比較・選定、直感的に操作できる使いやすさの考慮などが重要です。

結論として、PMSは宿泊業界において業務効率化や顧客満足度向上に貢献する重要なツールです。PMSの選定後も定期的なアップデートやサポートの充実を考慮することで、宿泊施設の持続的な成長を支援することができます。

ホテル管理システム(PMS)「every+1(エブリワン)」

GRIT株式会社が提供しているevery+1(エブリワン)は、「日本一わかりやすいホテルシステム」をコンセプトにしている、誰でもわかりやすい画面で直感的な操作ができるPMSです。導入しやすい価格で、予約管理、客室管理、会計管理などの機能を利用することができます。特に客室管理では、タブレットやスマートフォンを活用して他のスタッフとの連携や清掃の報告、画像付きの忘れ物報告などを簡単に行うことができます。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。