ホテル管理システム(PMS)導入の実態と課題:中小規模宿泊施設の本音を調査

公開日 (更新日 2025.10.17)

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ホテル管理システム(PMS)導入の実態と課題:中小規模宿泊施設の本音を調査

宿泊施設の運営において、予約管理や顧客データの活用、業務効率化は常に課題となっています。特に人手不足が深刻化する中、IT活用による業務改善は避けて通れない道となっています。ホテル管理システム(PMS:Property Management System)はそんな課題を解決する可能性を秘めていますが、実際の導入状況や利用実態はどうなっているのでしょうか?

GRIT株式会社が2023年11月に実施した「ホテル管理システム(PMS)の利用実態に関する調査」から、中小規模宿泊施設が抱える本音と課題を紐解いていきます。

調査概要

  • 調査期間:2023年11月7日(火)~11月13日(月)
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査人数:1,029人
  • 調査対象:中小規模の宿泊施設に勤務する方

PMSの導入状況:約3分の1の施設はまだ未導入

調査によると、中小規模の宿泊施設におけるPMS導入状況は以下の通りです。

  • 現在利用している:65%
  • 過去に利用していたが現在はしていない:24.1%
  • 利用したことはない:10.6%

注目すべきは、全体の約4分の1がPMSを「利用しなくなった」という事実です。これは単なる数字ではなく、PMSの運用や定着に関する大きな課題が潜在していることを示唆しています。利用をやめた理由として考えられるのは

  1. システム導入後の運用定着の失敗
  2. 慣れた紙運用への回帰
  3. システムやサーバーのサポート終了に伴う利用停止

3点が主に考えられます。

今回の調査からは約1割の施設が「利用したことがない」と回答していますが、全国の宿泊施設全体で見ると、まだまだPMSを導入していない施設が多い状況にあると言えるでしょう。

よく使われるPMS機能と活用度

利用していると回答した施設の中で、どのような機能を使用しているのかを見ていきましょう。

使用機能(複数回答可):

  1. ブッキングエンジンやサイトコントローラーへの連携:47.8%
  2. POSシステム:45.8%
  3. 売上管理:42.9%
  4. 予約管理:32.7%
  5. 売掛管理:27.5%
  6. 購買管理:27.4%

このデータから、多くの施設がオンライン予約の管理と施設内のレストランや物販管理に重きを置いていることがわかります。顧客管理よりも日々の運用に直結する予約管理を優先している傾向が見られます。

また、PMSの機能の活用できているかについての回答は以下の通りです。

PMSの機能活用度

  • かなり活用できている:39.1%
  • ある程度は活用できている:53.1%
  • あまり活用できていない:7.6%

興味深いことに、「かなり活用できている」と回答した施設は4割にとどまり、約6割の施設は満足に活用できていないことが明らかになりました。実際に利用している施設への、機能利用率についてのヒアリングでも、多くの施設は搭載されている機能の半分程度しか使いこなせていないという声が聞かれました。

なぜ機能を使いこなせていないのか?

  1. 各施設ごとの運用方法の違い:すべての機能を使うよりも必要な機能に集中する傾向
  2. 日々の接客業務の忙しさ:新機能を試す余裕がない
  3. 基本機能への集中:予約管理や会計など必須機能以外に手が回らない
  4. マーケティング活用の不足:データ活用やリピート誘導などの二次活用ができていない

多くの施設では、せっかく蓄積されたデータが「宝の山」となっているにも関わらず、その活用ができていない状況です。データ活用やマーケティングを指南・代行してくれるパートナー企業との連携が、中長期的な成長には必要であると言えるでしょう。

PMSの利用コストと導入の課題

月額利用料の実態

PMSの月額利用料は、施設によって大きく異なります。

  • 1万円未満:7.6%
  • 1~3万円未満:26.6%
  • 3~5万円未満:39.4%
  • 5~10万円未満:19.4%
  • 10万円以上:7.0%

最も多いのは月額3〜5万円の価格帯ですが、全体の約3割は3万円未満とリーズナブルな価格帯で運用している施設も少なくありません。

PMSの導入・運用における課題

利用にあたっての課題(複数回答可):

  1. 従業員への周知の徹底が必須:41.1%
  2. PCやタブレットの操作が必須:37.7%
  3. 初期費用や利用料金が高い:30.5%
  4. サーバーを配置するためのスペースが必要:21.3%
  5. 操作が難しい:21.1%
  6. 主要サイトからの予約率が下がった:11.6%

これらの課題から、PMSの運用には、依然として「難しい」というイメージが根強く残っていることがわかります。特に、現在の人手不足問題から外国人材の登用やシニア層の再雇用を進める中で、PMSの操作ができるスタッフが限られてしまうと、業務の属人化がさらに進んでしまう懸念があります。

現場の声から見える具体的な課題:

  • 「入力が難しい」(30代/男性/大阪府)
  • 「その都度従業員への使用指示を教育しないといけない」(40代/男性/大阪府)
  • 「仕組みを理解してシステム的な操作を行わないと、逆に効率が悪い。勉強は必須」(40代/男性/広島県)
  • 「新入社員への導入指導に難しさがある」(50代/男性/京都府)

これらの声からも、PMSの活用には継続的な教育が不可欠であることがわかります。システムの仕様が複雑な場合、使いにくさを感じる方も多いようです。

PMS未導入施設の本音:導入のハードル

PMSを利用していない施設に、導入していない理由を聞いたところ以下の回答となりました。

  • 導入が大変そう:50.1%
  • 導入後の管理が大変そう:32.8%
  • 利用費が高いイメージ:24.7%

導入には初期費用がかかり、システムについて一から学ぶ必要があります。このコストを考えると、PMSの導入に二の足を踏む方が多いかもしれません。

未来への期待:7割の施設がPMS導入に前向き

しかしながら、「今後PMSを利用してみたいと思いますか?」という質問への回答は:

  • とてもそう思う:5.8%
  • ある程度はそう思う:64.1%
  • あまりそう思わない:24.6%
  • まったくそう思わない:5.5%

という結果になりました。

約7割の方が今後PMSを利用してみたいと回答しており、潜在的なニーズは高いことがわかります。

PMSに期待することは?

PMSに期待すること(複数回答可):

  1. 使いやすさ:42.6%
  2. 導入のしやすさ:41.5%
  3. レジ業務の簡略化:27.5%
  4. 効率化による業務負担軽減:25.2%
  5. 施設内の管理業務の簡略化:17.8%
  6. 会計事務の簡略化:17.1%

これらの結果と、前述したPMSを使いこなすための教育コストの観点から、宿泊施設が求めているのは「使いやすく導入しやすいPMS」であることが明らかになっています。一昔前のPMSは独自サーバーの構築や専門的な知識が必要でしたが、現在は手頃な価格で誰でも操作できるように工夫されたシステムも増えています。

現状から考えるPMS選定のポイント

今回の調査結果から、PMSを導入した施設の約4分の1が利用を中止し、さらに利用を続けている施設の約6割が機能を十分に活用できていないという実態が現れています。せっかく導入したPMSを施設にしっかりと定着させ、その効果を最大限に引き出すためには、以下の3つの重要なポイントを押さえる必要があります。

「使いやすさ」を優先する

調査の結果、PMSに求められているのは「使いやすさ」であることが明らかになりました。どんなに高機能でも、現場のスタッフが使いこなせなければ意味がありません。PC操作が苦手なスタッフや新人でも、マニュアルなしで直感的に操作できるシンプルなUI(ユーザーインターフェース)かどうかが重要です。

資料やデモンストレーションだけでなく、無料トライアルなどを活用し、実際に現場の従業員が触れてみることをおすすめします。普段の業務に近い形で操作性を確認することで、導入後のギャップを最小限に抑えることができます。

導入後のサポート体制を確認する

PMS導入時の最大の課題として多くの施設が挙げるのが「従業員への教育」です。導入時の丁寧なトレーニングはもちろんのこと、運用開始後も疑問点やトラブルが発生した際に、迅速かつ的確なサポートを受けられる体制が整っているかを確認しましょう。

電話やメールでのサポートに加え、オンラインマニュアルやFAQなど、多様なサポートチャネルが用意されていると、安心して利用を続けられるでしょう。導入後のサポート体制が確立されていることで、スタッフの教育コストを削減し、導入後の不安を大きく軽減することができます。

自施設の運用に合った機能を見極める

「多機能=良いシステム」とは限りません。機能が多いと、かえって操作を複雑にし、使わない機能が邪魔になってしまうこともあります。自施設の現在の業務フローを洗い出し、本当に必要な機能が過不足なく搭載されているかを見極めることが重要です。

例えば、予約管理、顧客管理、清掃管理、会計機能など、自施設にとって優先度の高い機能は何かを明確にしましょう。将来的な拡張性も考慮しつつ、まずは今の運用にフィットするかどうかを最優先で検討することで、日々の効率的な運用に繋がり、結果として無駄なコストも抑えられます。

これら3つの点を踏まえてPMSを選定し、導入することで、施設に最適なPMSを活用し、業務効率を劇的に向上させることが可能になります。PMSは単なるツールではなく、スタッフの負担を減らし、より質の高い顧客サービスを提供する可能性を広げる存在となるでしょう。

まとめ:PMSは「守り」から「攻め」への転換点

宿泊業界では、目の前のお客様対応が最優先となり、バックヤード業務はどうしても後回しになりがちです。しかし、ITの力で業務効率を実現できれば1時間かかっていた業務が30分に短縮できたり、2人で行っていた作業が1人でできるようになる可能性があります。

そして、削減できた時間や人員をお客様サービスの向上に振り向けることで、顧客満足度アップとリピーターなどの将来の集客にも繋がります。

集客など「攻め」の施策に目が行きがちですが、自社の業務改善という「守り」がしっかりしていることで、より効果的な「攻め」の戦略を展開できるようになるのです。

PMSの選定では、単に機能の多さだけでなく、実際に現場で使いやすいか、導入のハードルが低いか、教育コストはどれくらいかなど、総合的な視点で検討することが重要です。今後はさらに、スタッフ間のコミュニケーションを円滑にするツールとしての役割や、多言語対応などのニーズも高まってくるでしょう。

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またシステム操作の難しさをなくすために、マニュアルがなくても直感的に操作できるデザインとなっております。PMS導入のご検討の際は、ぜひ「every+1(エブリワン)」をご活用ください。詳細については、お気軽にお問い合わせください。

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【調査元】 GRIT株式会社 調査概要:「ホテル管理システム(PMS)の利用実態」に関する実態調査 調査期間:2023年11月7日(火)~2023年11月13日(月) 調査方法:インターネット調査 調査人数:1,029人 調査対象:中小規模の宿泊施設に勤務する方 モニター提供元:ゼネラルリサーチ