ホテル・旅館(宿泊業)で生産性向上を図るには?5つの施策を紹介!

公開日 (更新日 2024.01.09)

経営ノウハウを学びたい方

ホテル業界においては深刻な人手不足などの課題が多く山積しています。競争がますます激化するなかで今後も生き残っていくためには、生産性の向上が必要不可欠といえるでしょう。この記事では、ホテルや旅館で生産性向上が求められる理由や具体的な施策について解説します。記事の最後に生産性向上に役立つおすすめのITツール・システムも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ホテル・旅館で生産性向上が求められる背景

まずは、ホテル・旅館で生産性向上が求められる背景を押さえておきましょう。ここでは、主な2点について解説します。

採用難により人手不足が深刻化している

宿泊業では採用難による人手不足が深刻化しています。2022年の帝国データバンクの調査によれば、正社員の人手不足が65.4%と全業界中2位です。非正社員の人手不足も75%を超えています。ちなみにコロナ前・コロナ後の有効求人倍率(接客・給士の職業)を比較すると、まずコロナ前の2019年11月が3.95%でした。そして、2021年1月が1.80%、2021年6月が2.77%で、徐々に上昇しつつあります。なお、コロナの流行中は採用を控えていたホテルもあったようです。

また、2021年雇用動向調査によるとホテル業界の離職率は25.6%と、他業界と比較して最も高くなっています。

このように人的資源が限られる中で成果を出すためには、従業員一人ひとりの労働生産性の向上(人時生産性)が不可欠です。

参考:帝国データバンク『人手不足に対する企業の動向調査(2022 年 10 月)』
参考:厚生労働省『一般職業紹介状況(職業安定業務統計)
参考:厚生労働省『令和3年雇用動向調査結果の概要

多様なサービスが求められている

インターネットが普及して誰もが手軽に情報検索できるようになった昨今、ホテルを選ぶユーザーの目も厳しくなってきています、また、「サービスのレベルが高いホテルでゆっくりしたい」「宿泊先を拠点として観光地を巡りたい」など、ユーザーのニーズも多様化しています。

アフターコロナの時代において差別化を図り、競争力をアップさせるためには、生産性の向上およびより質の高いアウトプットが必要です。

ホテル・旅館で生産性向上を図るメリット

ここでは、ホテル・旅館で生産性向上を図る主なメリット2つについてそれぞれ解説します。

労働環境の改善につながる

生産性向上のためには、まず勤務体制などの労働環境や業務内容を見直す必要があります。無駄な業務をなくして効率化を図ることによって、適切なシフト設定など人員配置や勤務体制を改善できるため、人手不足の課題解決につなげることができます。

また、生産性の向上によって給与アップなど労働環境が改善されれば、従業員の満足度が上がり、業務へのモチベーションも高まります。従業員が活き活きと働けるようになることによって、より質の高いアウトプットにもつながります。

コスト削減を実現しながら売上拡大につなげられる

業務内容を見直して無駄な業務をなくすなど業務の効率化を図れば、空いた時間をマーケティング戦略など、売上拡大につながるコア業務にリソースを割くことができるようになります。つまり、生産性の向上が結果的に売上拡大につながるのです。また、無駄を省くことによってコスト削減も実現できるため、結果として利益率も向上します。

ホテル・旅館で生産性向上を図るための5つの施策

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ここでは、ホテル・旅館で生産性向上を図るための5つの施策を紹介し、それぞれについて解説します。

ITシステムの導入・活用で業務効率化を実現する

ITシステムを導入・活用することで業務効率化を実現できます。たとえば、PMSや予約システムなどのツールを導入すれば業務改善を図ることが可能です。予約システムがあれば、利用客はインターネットで予約を完了できるため、予約電話を受ける業務を減らせます。他には、アプリや専用システムによる自動チェックイン・チェックアウト、清掃ロボットによる清掃業務の短縮なども業務を効率化する方法の例です。業務の無駄を可能な限り省いて効率化することによって、重要な業務に人的リソースを当てることができます。

勤務制度の見直しを行う

勤務制度の見直しを行うことも生産性の向上につながります。

たとえば、従業員に十分な休暇を取らせるための方法として、「定休日」を設けるという方法があります。従業員が休暇を取りづらい職場では業務に対するモチベーションも向上しないため、結果的に生産性の低下を招くためです。定休日に休めることが分かっていれば、通常業務が忙しくても意欲を維持しながら前向きに取り組めます。

いつ定休日にするかはホテル・旅館のロケーションや客層によって異なりますが、利用客が少ない時期を選ぶと良いでしょう。

既存従業員のスキルアップに注力する

限られた人的リソースのなかで質の高いアウトプットを実現するためには、既存従業員のスキルアップが欠かせません。

たとえば、フロント係やレストランの準備・接客といった複数の業務を一人の従業員がこなせるようにするなど、マルチタスク化が効果的です。また、繁忙期に少ない人的リソースで業務を回すためには、客室清掃係の業務のスピードアップが求められます。

教育に時間を割く余裕がない場合は、動画マニュアルなどを作成しておくと従業員が新たなスキルを習得しやすくなります。また、動画マニュアルは新人教育にも活用可能です。

プランやコースの見直しを行う

宿泊プランや食事コースの見直しも生産性向上につながります。

現行の人的リソースで手が回らない状況であれば、宿泊プランや食事コースの内容の見直しを行い、時間や手間、コストを削減できる要素を拾い出して改善しましょう。たとえば、食事に関しては会席コースの種類を減らすことによって、調理にかかる手間の削減につながります。選択肢の豊富さは利用客にとって魅力ではあるものの、あまり注文のないコースなどはカットして、業務効率化を図る方が良いでしょう。

積極的な情報発信を行う

ホームページやSNSを連動させながら、宿泊施設やプランの魅力を発信することも、生産性向上に必要な要素です。

たとえば、公式サイトからのアクセスを増やすことによって、電話予約に対応する時間・手間・コストを削減できます。また、OTA経由の予約よりも公式サイトからの予約を増やすことで、OTA手数料を削減し利益改善を図れます。OTAに掲載できる情報は限られていますが、公式サイトならホテル・旅館の魅力を十分に伝えられるだけの情報を掲載できるので、積極的に情報発信して公式サイトへのアクセスを増やしていきましょう。

さらに、公式サイトにFAQも掲載しておけば、電話・メールなどでの問い合わせに対応する手間を減らせます。

ホテル・旅館で生産性向上を図るためのステップ

ここでは、ホテル・旅館で生産性向上を図るための3ステップについて解説します。

現状の生産性を把握する

まずは、自社の生産性を可視化し、現状を把握することが大切です。労働生産性は次の計算式で求めることができます。

生産性=産出量(アウトプット) ÷ 労働投入量(インプット)

労働生産性には物的労働生産性と付加価値的労働生産性の2種類があります。物的労働生産性を把握するには、産出量=利用客の人数、労働投入量=労働者数×労働時間で計算します。付加価値労働生産性を把握するには、産出=売上総利益、投入=労働者数×労働時間で計算します。

業務の洗い出しを行う

上記の計算式から現状の生産性を把握できたら、次は、部門ごとの業務内容やプロセスの洗い出しを行いましょう。また、職場環境の改善のために5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の見直しも検討します。

そのなかで無駄と考えられるタスクなどを可視化し、解決すべき課題を抽出します。また、重要度の高い業務と低い業務の切り分けも行いましょう。課題を改善する際の優先順位や施策を実施する順番を決めておくとスムーズに対策できます。

目標(KPI)を決め施策を実行する

上記で洗い出した課題について、優先順位の高いものから順に改善施策を検討します。たとえば、ITツールの導入や勤務・教育制度の見直しなどは最初に取り組むべき施策です。また、施策を実行する際には、必ずKPIを定めておきましょう。KPIとは「重要業績評価指標」とも呼ばれるもので、実施した施策が効果を上げているかどうかを判断する指標です。

ホテル・旅館で生産性向上に成功した企業事例

ここでは、ホテル・旅館で生産性向上に成功した企業事例を3つ紹介します。

おごと温泉 湯元舘様

労働者にとってホテル・旅館業は「3Kの職場」というイメージがあり、敬遠される傾向があるかもしれません。『おごと温泉 湯元舘』様は、そういったネガティブなイメージを払拭するための手段として、職場のIT化を推進しています。

たとえば、顧客情報を管理するシステムであるPMSやオーダーエントリーシステムなどのITツールを積極的に導入することによって、生産性向上における成果を上げています。

参考:湯元舘 | 関西DX推進プラットフォーム事業『日頃の改善意識からIT化を積み重ねて、生産性を向上し、働く環境を改善

ほほえみの宿 滝の湯様

山形県天童温泉の『ほほえみの宿 滝の湯』様では、外注スタッフのコストが高いことが課題でしたが、実は適正な人員数に日々のばらつきがあるにもかかわらず、必要以上の人数を配置している日も少なくありませんでした。また、外注スタッフの教育にも時間と手間がかかるため、ベテラン社員のリソースが奪われていました。そこで、適正人員配置のコントロールを実施した結果、外注費削減を実現しています。また、従業員のマルチタスク化を図って人手が足りない部署へのヘルプ体制を構築し、少人数の人員で運営できる体制を実現しています。

参考:観光庁『人時生産性の向上 – ホテル旅館”カイゼン”で人手不足解消!宿泊業の生産性向上事例集

大地の彩 花月亭様

蓮台寺温泉の『大地の彩 花月亭』様では、紙ベースでのマニュアルは整備されていたものの一般的な内容に留まっていたため、自社サービスの細かい点までは伝えきれておらず、新人教育に手間がかかっていることが生産性向上に向けた課題でした。そこで、自社独自の動画マニュアルを作成し、新人スタッフの即戦力化につなげています。結果として、新人がスキルを習得するまでのスピードが向上し、コストや手間の削減を実現できました。

参考:観光庁『人材育成・定着化 – ホテル旅館”カイゼン”で人手不足解消!宿泊業の生産性向上事例集

ホテル・旅館で生産性向上を図る際のポイント・注意点

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ここでは、ホテル・旅館で生産性向上を図る際の主なポイント・注意点3つを紹介し、それぞれについて解説します。

効果検証は徹底して行う

生産性向上に向けた施策を実行した後は、定期的な効果検証を忘れずに行うことが重要です。それぞれの施策はあくまでも生産性向上の1つの手段でしかないので、施策そのものにこだわって「生産性向上の実現」という目標を見失うことがないように注意してください。ある程度の期間を費やしても成果を感じられない施策については、必要に応じて別の施策に切り替えるなど、柔軟に対応していきましょう。

既存従業員との協力が必要になる

ホテル・旅館業では慢性的な人手不足が続いています。そのような状況下でホテル・旅館において生産性を向上させるには、既存従業員との協力体制も欠かすことができない大切な要素です。経営者・運営者のトップダウンで施策を実施しようとするのではなく、既存従業員による現場からの声も必要に応じて拾い上げながら、生産性向上のための取り組みを行うようにしましょう。

自社で課題解決が難しい場合は外部コンサルも検討する

生産性向上の課題はみえているものの適切な改善策が分からない、自社にノウハウがない場合は、外部コンサルを活用するといった方法も有効です。たとえば、株式会社宿力では、Web集客を中心とした宿泊施設のコンサルティングサービスを提供しています。自社ホテル・旅館の価値を高めたい、客単価を上げたいなどのお悩みがあればぜひ相談してみてはいかがでしょうか。

ホテル・旅館の生産性向上に役立つITシステム・ツール

最後にホテル・旅館の生産性向上に役立つITシステム・ツールを2つ紹介します。

PMS『every+1(エブリワン)』

生産性向上のためには、顧客情報や予約を管理できるPMSの活用が必須です。特に、GRIT株式会社が手掛ける『宿泊施設向け業務支援アプリ every+1(エブリワン)』は、ホテルや旅館などの運営マネジメント業務を大幅に効率化します。

エブリワンはスマートフォンやタブレット単体で使えるため、場所を問わず活用できる点がメリットです。また、操作が簡単なため、パソコンが不得意な従業員でも使いこなすことができます。さらに、初期費用0円、月額費用9,900円〜と比較的低コストで導入・運用が可能な点も、エブリワンのメリットです。

ホテル宿泊予約システム『予約番』

株式会社キャディッシュが手掛ける『インターネット宿泊予約システム 予約番』の導入も、生産性向上の助けになります。予約番は、機能性・操作性の高い宿泊予約システムです。

予約番では、予約画面を30パターンから選択できるので、ホテル・旅館のイメージに合ったデザインにすることができます。また、顧客情報をグループで一元化できるため、多店舗展開する際にも横断的なアプローチが可能です。さらに、インバウンドの90%をカバーする8言語(英語・中国語[繁体字と簡体字]・韓国語・タイ語・ドイツ語・フランス語・マレーシア語)にも対応しています。

ホテル・旅館で生産性向上を図ろう!

ホテルや旅館業界においては人手不足や競争の激化などの問題があります。それらを背負いながらアフターコロナの時代のなかで生き残るためには、生産性の向上が欠かせません。生産性向上に向けた施策にはさまざまなものがあるため、この記事で紹介した内容を参考に、自社で適切な施策を実行してください。

私たち株式会社キャディッシュは、予約システムのご提供や、パートナー企業様のシステム・サービスのご紹介などを通して貴社におけるホテル・旅館運営を全力でバックアップします。ぜひお気軽にお問い合わせください。