ホテル経営の初期費用はいくら?相場や資金・コストを抑えるコツも解説

公開日 (更新日 2024.01.09)

開業準備に役立つ情報を知りたい方

ホテルを経営するには、多額の初期費用が必要です。社会情勢の影響を大きく受ける傾向もあることから、これから起業してホテルを開業したい場合は、資金について入念な準備が必要になります。

必要となる初期費用の内訳や相場、初期費用を抑えるコツなどを解説します。

ホテルの開業に必要な予算は条件によって大きく変動する

ホテルを開業するために必要な初期費用は、一般的に1500万円~と言われています。ただしこれは、建物を居抜きで用意できた場合の金額です。

部屋数や所在地、立地によっても異なりますが、ゼロから建物を建てて営業できる状態にするには、数千万円~数億円程度は必要です。地方で開業したり、既存の建物を活用したりすることで、土地代や建設費を抑える方法もあります。

ホテル経営に必要な5つの初期費用と相場

ホテルの経営を考えた際、準備しておくべき初期費用とその相場を紹介します。

土地代・工事費

まず必要なのがホテルを建てる土地を取得し、建物を建設するための土地代や工事費(建設費)です。これらはまとめて、『物件取得費』とも言います。土地代や内装・外装の工事費以外に、以下の様な費用も含まれます。

  • 図面作成や設計監理などの設計費
  • 土地購入時の税金
  • 不動産会社に支払う仲介手数料

土地代は地域によって差が大きいものの、ホテルの初期費用としてはかなり高額です。設計費も誰に依頼するかによって異なりますが、工事費の5~10%程は掛かると考えて下さい。

工事費は坪単価で算出されますが、鉄骨か木造かなど、ホテルを建設する方法により変動します。国税庁によると、令和4年度における1平方メートル当たりの工事費の平均は、木造なら173万円、鉄骨鉄筋コンクリートなら284万円です。

参考:国税庁『地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和4年分用】

尚、昨今は資材費が高騰しやすい傾向にあり、社会情勢によって大幅に変動する可能性があります。情勢を見極めることも、初期費用を抑えるために重要です。

旅館業営業許可証の取得費や消防設備の設置費

宿泊施設を開業する際は、開業予定地の自治体に届け出て、『旅館業営業許可証』を交付してもらう必要があります。この時、申請料として約2~3万円が掛かります。

また、消火器や火災報知機などの消防設備も設置しなくてはなりません。費用は建物の規模によって大きく変わりますが、総額で数百~1,000万円程度が目安です。

旅館業営業許可証は、自力で書類を準備して申請もできますが、外部に委託する場合は別途数十万円が必要になります。

設備費・物品購入費

設備費・物品購入費とは、以下を始めとした、ホテル経営に欠かせないものを購入する費用です。

  • 館内に設置する家具・家電
  • 寝具やリネン類
  • アメニティなどの消耗品
  • スタッフの制服

ホテルのコンセプトによって選ぶ設備・物品は変わるため、掛かる経費も変わってきます。シンプルなシティホテルなら1部屋当たり200万円前後、高級志向のホテルや、設備によっては1部屋当たり600万円前後などとも言われています。

客室以外にもロビーやレストラン、ショップ、厨房などでも設備費・物品購入費は掛かるため、計算に入れておかなければなりません。

広告宣伝費やWebサイト制作費

ホテルの開業を告知するための広告宣伝費も、忘れずに確保しましょう。

Web広告、紙媒体の広告など媒体によって費用は異なりますが、数万円~数十万円は必要です。自社のホテルのWebサイトを製作する場合にも、経費が掛かります。

オンライン上で予約を受け付ける旅行会社「OTA(Online Travel Agent)」を使わない場合は、自社サイトで予約を受け付けるための宿泊予約システムの導入も考えたいところです。導入費用は掛かるものの、予約管理の手間やミスを避けやすくなります。

他には、スタッフの新規採用に関する求人広告掲載料も必要です。

直近数カ月~数年分の経費

上記以外にも、初期費用として用意しておくべきものは多数あります。例えば水道光熱費、人件費、館内施設の運営やシステム管理に必要な外注費などです。

経営が軌道に乗るまでは、売上が安定しづらいことも考えられます。少なくとも、1カ月に必要な経営資金を半年分は用意しておきましょう。

ホテルの初期費用を左右するポイント

ホテル経営を開始するには多額の初期費用が必要ですが、方法次第で費用も大幅に異なってきます。開業したいホテルのコンセプトを考えながら、最適な方法を選択して下さい。

開業する場所がどこか

都心と地方を比べると、地方は物件取得費が安くなる傾向にあります。

ただし、費用削減を優先して立地条件を妥協し過ぎると、経営が立ち行かなくなる可能性もあります。地方でも観光施設やイベント会場などが近く、且つ競合施設が少ないエリアを探してみると良いでしょう。

ビジネス客をターゲットにしたホテルを建てる場合は、流動人口の多いエリアを選ぶべきでしょう。加えて交通機関の充実度合いも重要な要素で、特に新幹線の駅があるか否かは大きな影響があります。

新築か居抜きか

土地を買って建物を新築するか、居抜き物件を購入して改装するかによっても費用は大きく変わります。

古民家・空き家を購入し、リノベーションして使う方法も良いでしょう。また、賃貸マンションを購入し、ホテルに改装して使うことも可能です。

購入する物品や設置するスペースは何か

ホテルに置くべきものをよく検討することでも、初期費用の削減は可能です。

インテリアを減らすと、経費は抑えられます。初期費用が掛かるオープン当初はシンプルにまとめ、後から買い足していくのも良いでしょう。高額な物品は、中古ショップやリースで探すのも手です。

設計の段階で、利用者の少なそうなスペースを作っていないかの確認も必要です。ターゲットとする層に必要なさそうなものは置かない・作らないという視点も持ちましょう。

ホテルの業態や経営方式はどうするか

ホテルの業態や経営方式によっても、掛かる経費が大きく異なります。詳しくは後述しますが、ホテルの経営方式は、大きく分けて4種類あります。どの方式を選ぶかで、どこまで自分で費用を用意すべきかが変わってくるのです。

また、ホテル管理システム(PMS)などの導入により効率的な経営を行えば、スタッフの業務効率が上がって人件費を抑えることも可能になります。

ホテルの業態は大きく5つ

一言でホテルと言っても、さまざまな種類があります。ホテルの種類によって、顧客のターゲットや必要とされるサービスの内容も変わってきます。

ビジネスホテル

宿泊することに重きを置いたホテルで、客室内やロビーなどのインテリアもシンプルです。館内施設も控えめで、機能性を重視しているのが特徴です。

客室はシングルルームが多く、宿泊料金も比較的安く設定されています。企業と法人契約を結んでいるケースもあり、メインターゲットは出張などで利用するビジネス客です。しかし近年は、旅行中の宿泊先として選ぶ人も多くなっています。

シティホテル

都市部に多く快適に過ごすことを目的としているホテルで、多くはレストランやバー、プール、結婚式場などが備えられています。施設・設備やサービスが充実していることもあり、宿泊料金はやや高額であることがほとんどです。

客室は広めで、シングルルームからスイートルームまで、種類豊富にそろえています。国内外からの観光客はもちろん、ビジネス利用、カップル・ファミリーでの利用にも対応可能です。

リゾートホテル

観光地やビーチ、保養地などにあり、宿泊客がリラックスすることを重視しているホテルです。国内外からの観光客がメインターゲットで、シティホテルなどよりも長めに滞在する宿泊客が多い傾向にあります。

ホテルから出なくても過ごせるよう、温泉や大浴場などが充実している点も特徴です。交通アクセスが良くないリゾートホテルのなかには、送迎車を用意しているところもあります。

レジデンス・コンドミニアム

一般的なホテルとは異なりますが、レジデンス・コンドミニアムといった宿泊施設もあります。

レジデンスとコンドミニアムは、キッチンや洗濯機、生活に必要な設備が備え付けられている宿泊施設です。ゲストは暮らす様に宿泊でき、中・長期滞在をする人も多くいます。また、投資対象として扱われることもあります。

民泊・ゲストハウス

厳密にはホテルではありませんが、民泊やゲストハウスと呼ばれる宿泊施設もあります。

民泊は個人の家やマンションなどの空室を、宿泊場所として貸し出す方式です。旅館業法では「簡易宿所」に該当します。ゲストハウスは、宿泊者同士の交流をメインとする宿泊施設で、共用設備を多く設けているのが特徴です。

いずれも、外国人観光客を始めとしたさまざまな宿泊ニーズに応えられます。

ホテルの運営方式も4つある

ホテルには運営方式にも種類があります。運営方式によって必要となる初期費用も変わってくるので、準備できる資金に合わせて検討してはいかがでしょうか。

準備から運営まですべて自力で行う「所有直営方式」

開業前の準備から、開業後の運営までをすべて自身で行う方法が「所有経営方式」です。ホテル経営の中ではスタンダードな形で、自分の希望に合わせたホテル設計、運営ができます。

ただし、土地の準備から全てを自分で行うため、開業のために多額の資金が必要です。先々に掛かるであろう、運営費も用意しておかなければなりません。また、準備にかける時間も相応に必要となります。

ホテルチェーンに加盟する「フランチャイズ方式」

ホテルチェーンを運営する企業(フランチャイザー)に加盟して、ホテルを開業・運営する方法です。

土地代・建設費はフランチャイザーが持つため、資金やノウハウが少なくても開業しやすいというメリットがあります。ただし、本社の意向に沿わなければならないため、経営の自由度はそれ程高くありません。

高度な運営知識のあるフランチャイザーを選ぶと、経営も軌道に乗りやすいでしょう。

外部企業に運営を委託する「管理運営受託方式(MC方式)」

自身のホテルの運営のみを、外部の企業に委託する方式が「管理運営受託方式」です。「MC方式(マネジメント・コントラクト方式)」とも呼ばれます。資金はあるものの、運営ノウハウに自信がない場合に有効です。

建物や設備類は、自分で用意しなくてはなりません。また、ホテル運営に多くの人々が関与するため、意思決定のスピードが遅くなりやすいというデメリットもあります。しかし外部のノウハウが活用できるため、早い段階で経営が安定しやすい点はメリットでしょう。

建物を外部企業に貸し出す「リース方式」

自身のホテルを、ホテル運営会社に賃貸物件として貸し出す方式です。土地・建物は自分で用意する必要がありますが、賃貸料収入ができるため、安定した経営に繋がります。

ただしホテル経営が好調でも、オーナーは賃貸料以上の金額を受け取れません。テナントとして貸し出す方式のため、運営会社が撤退すると収入がなくなるリスクもあります。万一に備えて、違う運営会社を速やかに募集する手段を持っておきましょう。

知っておくべきホテル経営のリスク

ホテル業界は、社会情勢の影響を大きく受ける業界です。新型コロナウイルスの様な感染症が流行した場合、売上が大きく落ちる可能性があります。

万一、社会的な問題が影響した場合は、自社だけの努力では客室稼働率を上げるのが難しいでしょう。そうしたケースに備えて、ホテル経営を始める際はなるべく無駄を省いて下さい。

また、初期費用やランニングコストを抑えることも考える必要があります。ランニングコストをあまりにも高額にしてしまうと、売上があっても赤字が続いてしまう可能性もあります。

ホテルは非日常を提供するという側面があるため、すべてが質素である必要はありません。しかし無駄を省くことは、盤石な経営のためには避けては通れないことなのです。

ホテル経営を成功させるポイント

開業後、ホテル経営を軌道に乗せるために意識したいポイントがあります。それは、以下の4点です。

  1. ターゲットやコンセプトの明確化
  2. 宿泊プランの見せ方
  3. 複数の集客方法を用意しておくこと
  4. 業務の効率化

まず、メインターゲットやホテルのコンセプトを固めて下さい。購入する物品や提供する料理など、あらゆる内容が変わってくるためです。ターゲットに合ったコンセプトを作り上げることで、収益アップが見込めます。

開業後に客室稼働率を上げていくには、魅力的なプランを作って効果的に宣伝したり、集客方法を複数持ったりすることも大切です。Webサイトの整備をして直接予約できるシステムを構築する、SNSの運用をするなど、事前に計画しておくと良いでしょう。

とくに気にしておきたいのが、投稿される口コミです。近年はインターネット上の口コミを参考にする人も多いものです。より良い投稿をしてもらえる様に、宿泊客の満足度向上を追求しましょう。

加えて業務の無駄を省くことで、コストカットに繋がります。従業員の負担も軽減されて、「働きやすい」と感じられる様になるでしょう。その結果、離職率も下がって安定した運営をできることが期待できます。

まずはホテル開業に必要なコストを把握しよう

ホテル経営を始める際は、初期費用としてまとまった金額を確保しなくてはなりません。ホテルの形態や運営方式によって必要な金額は異なるものの、最低でも数千万程度は掛かるため、開業後の対策も合わせて考えておく必要があります。
ホテルのスムーズな開業・運営のために、プロの力を借りることも検討してはいかがでしょうか。キャディッシュではWebサイト制作サービス宿泊予約システム「予約番」、宿力ではホテル・旅館向けのコンサルティングサービスを提供しています。また、宿泊施設向け業務支援アプリ「every+1」は、業務の効率化にも役立ちます。ぜひ、ご利用下さい。