ホテルで使えるマーケティング手法6選。選び方や実施の手順も解説
公開日 (更新日 2024.01.09)

宿泊客を増やすために、自身のホテルでマーケティング施策の実施を検討している人も多いのではないでしょうか。
マーケティングといってもさまざまな種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。この記事では、マーケティング手法の概要と選び方、実施する手順について解説します。
目次
ホテル・旅館で使えるマーケティング手法6つ

ホテルや旅館で取り入れられている主なマーケティング手法として、以下の6つがあります。
- アウトバウンドマーケティング
- 口コミマーケティング
- ブランドマーケティング
- コンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
- インフルエンサーマーケティング
それぞれの概要を解説します。
アウトバウンドマーケティング
アウトバウンドマーケティングは、幅広い層へ一方的に発信するマーケティング手法で、古くから行われている方法です。一例として、次の様なものがあります。
- テレビCM
- 新聞・雑誌・インターネットの広告
- ダイレクトメールや折り込みチラシ
- 看板
- 展示会への出展
- テレアポ
アウトバウンドマーケティングは、関心の低い層に向けて情報発信し続けて接点を増やし、興味をそそることで顧客獲得数アップを目指すものです。継続的に発信することで顧客の信頼感が高まります。
ただし、相応のコストが掛かる、効果が出るまで時間が掛かる、コンテンツに魅力がなければ効果がないといったデメリットもあるため注意が必要です。加えて、広告ごとにデータを収集して分析しながら行う必要があります。
口コミマーケティング
口コミマーケティングとは、文字通り、顧客の口コミを活用するマーケティング手法です。
近年はインターネット上でホテルを探して予約する人が多く、その際に口コミを参考にする人が多数を占めます。口コミは第三者の意見のため、広告やホテル・旅館からの発信に比べてリアルな声が集まりやすく、信頼性が高いとされているのです。
トリップアドバイザーが2019年、自サイト利用者約2万3,000人に実施した調査によると、「宿泊先や食事場所などを決める際に口コミを重視する」といった回答をした人は全体の72%に上りました。
また、TrustYouが2022年、アメリカ在住の800人に実施した調査によると、ホテルを予約するまでに読む口コミの数は、平均8.7件という結果が出ています。加えて同調査では、投稿された口コミに対する施設側の返信に着目する顧客もいると判明しています。口コミを集めた後も、きめ細かな対応が必要でしょう。
ブランドマーケティング
ブランドマーケティングとは、ブランドの価値が高まる様に商品やサービスを宣伝するマーケティング手法です。
ホテルにおいては、認知度向上やイメージ浸透のために実施します。例えば、「〇〇ホテルはサービスが良い」「◯◯といえばあのホテル」などの様に、自身のホテルならではの印象を持たせることが重要です。
ただし、ブランドマーケティングはすぐに効果が出る手法ではありません。長い時間をかけて、コツコツ取り組む必要があります。また、その途中で不祥事などが起きれば、それまでに積み上げてきた信頼や好印象が失われてしまうケースもあるのです。
ホテルのスタッフが一丸となって良質なサービス提供に取り組むことが、ブランドマーケティングにおいて欠かせません。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、魅力的なコンテンツをインターネット上で公開して、見込み顧客の興味を引き付ける手法です。Webマーケティング手法の1つとして、さまざまな業界・企業で採用されています。
コンテンツマーケティングの例を挙げると、以下の通りです。
- オウンドメディアや自社サイト内のブログ記事
- ランディングページ(LP)
- SNS
- 動画(YouTube、TikTokなど)
- 書籍
- ウェビナー
- プレスリリースやインタビュー
ホテル・旅館の場合、さまざまなコンテンツを制作することで、見込み顧客に自社の情報を見つけてもらうことを目的とします。コンテンツマーケティングは広告よりも費用が掛からないため、コストを抑えたい場合にも最適です。
しかし、近年はコンテンツマーケティングを行う競合も多いため、発信内容に独自性や魅力を持たせる工夫が必要となります。
SNSマーケティング
SNSマーケティングはコンテンツマーケティングの一種です。インスタグラムやTwitter、TikTok、フェイスブックなどのSNSを運用して、見込み顧客を獲得します。ホテルや旅館の認知度向上が見込める他、多くの情報を発信することで予約客増にも期待できます。
手軽に始めやすく、フォロワー数やリーチ数などの数値が見えやすいことがSNSマーケティングのメリットです。フォローやリツイートで抽選など、キャンペーンを実施することもできます。
ただし、SNSごとに利用者層や好まれるテイストが異なるため、ホテルの特徴や獲得したい客層に合ったSNSを選んで発信することが重要です。また、SNSマーケティングではビジュアルが大切な要素となるため、使用する写真の質には、ある程度のグレードが求められます。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングもSNSマーケティングの1つですが、比較的新しいマーケティング手法です。
多数のファンやフォロワーを持つインフルエンサーと契約し、各自のSNSに自社をアピールする投稿をしてもらうことによって、一気に数千~数万人への発信が可能です。インフルエンサーを通じた発信は、自身での不特定多数への発信よりも強い影響力を期待できます。
ただし、インフルエンサーという個人に頼る面が大きい手法のため、予期せぬ炎上など思わぬトラブルが起きたり、インフルエンサーをうまくコントロールしきれない可能性もある点に注意が必要です。また、狙った効果を上げられるインフルエンサーの選定も、容易ではありません。
ホテルでのマーケティングを実施する手順

ホテルでのマーケティングを実施する際は、以下の手順で進めましょう。
- ターゲットの客層を決めてペルソナを設定する
- 自身のホテルの強みを分析する
- 競合となるホテルを調査して戦略を立てる
- コンセプトを設計する
- メディアやツールを使って発信し、随時状況を分析する
それぞれの手順を、簡単に解説します。
ターゲットの客層を決めてペルソナを設定する
まず、狙うペルソナを設定します。集客したい客層を大まかに絞り込んで、ターゲットはどういった考え方や趣味嗜好を持っているか、どの様に行動する傾向があるかを想像して、細かく考えていきましょう。
この時、年齢や性別のみといった大雑把な設定に留めることなく、できるだけ細分化して設定していくことが重要です。年齢・性別・仕事内容・ライフスタイル・情報収集源など、多角的に考えてみましょう。
またペルソナは1人ではなく、属性・宿泊目的が異なる人物像を5人程、設定しておくと良いでしょう。ホテルを利用する客層は、さまざまであるためです。
自身のホテルの強みを分析する
次に、自身のホテル・旅館の強みと弱み、個性や特徴などを洗い出し、アピールポイントを考えます。
この時、ホテルの立地やサービス内容、料理やスタッフなど、さまざまな角度で考えることが重要です。「SWOT分析」など外部環境と内部環境をプラス要因・マイナス要因に分けて分析するフレームワークも役立ちますし、サービスの現場で収集したデータを使う方法も効果があります。
強みや個性はいくつあっても良いので、なるべく多めに出すことが大切です。以下に、強みの具体例を挙げます。
- アクセスの良さ
- 地元の食材を生かした料理
- バリアフリー対応
- 記念日にふさわしい非日常的なムード
自身のホテル特有の強みがないか、積極的に考えましょう。
競合となるホテルを調査して戦略を立てる
自社ホテルについて分析するだけでなく、競合となるホテルについても徹底的に調査・分析して戦略を立てる必要があります。
まず、競合となるホテルを選び出してから、ロケーションやプラン、サービス、食事メニューなどを一覧にし、それぞれの内容を細かくチェックしていきましょう。その上で、自社の強みや個性と照らし合わせ、戦略を立てます。
重要なことは、自社の分析と同じくらい力を入れて分析していくことです。近隣で定期的に開催されるイベントがあるなら、それも確認しましょう。
コンセプトを設計する
上記のペルソナ設定や自社・競合の分析結果を踏まえて、ホテルのコンセプトを設計します。
この時、ペルソナや自社の特徴、時代に合ったコンセプトを選ぶことが重要です。特に、歴史のあるホテル・旅館の場合、創業当初に掲げたコンセプトが現代にそぐわなくなっているケースもあるため、再設計する必要があります。
コンセプトが定まれば、情報発信の戦略や経営戦略もさらに立てやすくなるでしょう。
メディアやツールを使って発信し随時状況を分析する
上で設定したペルソナに合ったメディアやツールで定期的に情報発信していきます。情報発信メディアとしては、SNSやプレスリリース、広告などがありますが、それだけではなくメールマガジンやWebサイトなどの整備も有効です。
また、一定期間ごとにデータを収集し、実施したマーケティング手法がどのくらい集客効果を上げているかについても確認する必要があります。予想より効果が出ていない場合は、随時、施策の変更も検討しましょう。
マーケティングで集客に成功した事例

ここでは、実際に上記の手法を導入して集客に繋がった事例を3つ紹介します。
- イメージの異なるブランドを複数用意「星野リゾートグループ」
- SNSと口コミを併用「東京ステーションホテル」
- 複数のペルソナを設定して集客増「草のホテル」
上記の例も参考に、取り入れるマーケティング手法を考えてみて下さい。
イメージの異なるブランドを複数用意「星野リゾートグループ」
ブランドマーケティングの成功例として有名なのが、国内外に拠点を持ち「リゾート運営の達人」を自称する星野リゾートグループです。
星野リゾートグループには「星のや」「界」「リゾナーレ」など、5つのホテルブランドがあります。「星のや」は圧倒的な非日常性と和の空間、「界」は地域の魅力を再発見する上質な温泉旅館、「リゾナーレ」は豊富なアクティビティを楽しめるファミリーリゾートです。
各ホテルブランドのコンセプトを明確にしたことで認知度が高まり、顧客が自分に合うブランドを選びやすくなっています。また、宿泊体験に満足した顧客に「別のブランドのホテルにも行ってみたい」と思わせることも可能にしています。
3-2 SNSと口コミを併用「東京ステーションホテル」
東京ステーションホテルは、SNSマーケティングと口コミマーケティングを併用して成功している良い例です。インスタグラムでホテルの内装や料理などの美しい写真を多数アップしており、3.1万人にフォローされています(2023年6月現在)。
定期的に情報発信しているだけではなく、コメントの1つ1つに丁寧に返信していることも、東京ステーションホテルの特徴です。心のこもった細やかな対応によって、リピーターを作っています。
複数のペルソナを設定して集客増「草のホテル」
これまで紹介したマーケティング手法とは異なりますが、マーケティングを実施する工程で必要となるペルソナ設定から集客増に繋がった事例です。
岩手県北上市にあるビジネスホテル「草のホテル」は、もともとビジネスマンをターゲットとしていました。そのため、2食付きプランや高単価の客室が売れない、ファミリーやカップルなど複数での予約が少ないという課題を抱えていたのです。
そこで、女性やグループ、カップルなど、それまで設定していなかったペルソナを複数設定し、それぞれに合うプランを作りました。さらに、公式Webサイトもブラッシュアップしたところ、Web売上が20カ月で約2,700万円もアップしています。
取り入れるマーケティング手法の選び方
上で述べた通り、マーケティングにはさまざまな手法があるため、やみくもに導入すれば良いというものではありません。自身のホテルに導入すべき手法を選ぶ際は、以下の観点から選ぶと良いでしょう。
- 獲得したい顧客で選ぶ
- かけられる予算で選ぶ
それぞれの選び方について、解説します。
獲得したい顧客で選ぶ
どういった顧客を獲得したいのかによってマーケティング手法を選ぶという方法があります。例えば「集客アップ」と言っても、新規顧客を獲得したいのか、それともリピーターを獲得したいのかでは、選ぶべきマーケティング手法も取るべき戦略も異なるのです。
新規顧客の獲得がメインであれば、自社に関する情報の露出を増やすマーケティング手法に効果を期待できます。一方、リピーター獲得がメインであれば、メールや自社アプリなどを経由して顧客に直接、情報を届けるマーケティング方法が効果的です。
また、ターゲットに若年層を取り入れるかどうかでも、適切なマーケティング手法が変わってきます。
掛けられる予算で選ぶ
掛けられる予算を基準にマーケティング手法を選ぶ方法もあります。一般的に、マーケティング手法によって掛かる費用が異なってくるためです。
例えばテレビCMの場合、制作費だけで100万円以上掛かることも珍しくありません。加えて、放映費も数十万円は掛かります。
インフルエンサーマーケティングなら、フォロワー1人当たりの単価2~4円×フォロワー数がインフルエンサーへの報酬の目安です。また、無料で宿泊・飲食を提供するコストも掛かります。
口コミマーケティングの場合、口コミ投稿のお礼として記念品や特典を提供するなど、比較的低コストでできる場合もあります。
まとめ 自社のホテルに合ったマーケティング手法選びが重要

ホテルで使えるマーケティング手法は多数ありますが、実際に効果を得るためには獲得したい客層に合わせたものを選び、戦略を設計することが重要です。紹介した事例の様に、複数のマーケティング手法を組み合わせる方法もあります。
とはいえ即効性のある手法は少ないため、ある程度は長期的に取り組む覚悟が必要です。もし、自社だけでマーケティング戦略を立てる自信がない場合は、プロの手を借りる方法もあります。マーケティング手法の選定から相談したいなら、Webマーケティングのコンサルティングサービスを利用するのもおすすめです。
「宿力」は、ホテル・旅館の集客コンサルティングを得意としています。ぜひ、お気軽にお問い合わせ下さい。