フランチャイズ方式のホテル運営とは?導入事例や開業までの流れも解説
公開日 (更新日 2024.01.17)

ホテルの開業・運営にはさまざまな知識やノウハウ、資金が必要です。しかし、知識や資金などが不足している場合は『フランチャイズ方式』を選ぶ手もあります。
フランチャイズ方式の概要や他の運営形態との違い、加入から開業までの流れなどについて解説します。
目次
フランチャイズ方式とは
ホテルの運営形態には幾つか種類がありますが、その1つがフランチャイズ方式です。フランチャイズ方式の特徴について解説します。
ホテルチェーンに加盟して運営する形態
『フランチャイズ方式』とは、ホテルチェーンを運営する企業(フランチャイザー)に加盟して開業・運営するシステムです。
加盟料を支払うことで、フランチャイザーの持つブランド力や経営のノウハウを活用できます。また、本部から担当者が訪れて、経営のサポートをしてくれることもあります。
予算や知識がなくても運営しやすい点がメリット
フランチャイズ方式では、土地代や建設費は加盟する側(フランチャイジー)が持ちます。そのため、ある程度の費用負担は発生することを知っておきましょう。
しかし、ホテル経営の経験が乏しくても、安心感のある運営ができる点は魅力的です。ホテルチェーンのサイトに名前が載り、フランチャイザーの予約システムが利用できるなどのメリットもあります。フランチャイザーのブランド名・知名度が利用できるため、安定した集客も見込めるでしょう。
宿泊客にとっても、同一ブランドのホテルと共通の予約システムやポイントサービスなどが使えるため、使いやすくてお得になるというメリットがあります。ホテルチェーンならではのサービスが受けられる点も、魅力に感じる宿泊客は多いようです。
デメリットは経営の自由度や柔軟性が高くないこと
フランチャイズ方式でのホテル経営はフランチャイザーの意向に沿う必要があるため、自由度はそれ程高くありません。
オリジナリティ溢れるホテルを実現することは難しく、広さや部屋数など建てるホテルの形式が指定されていることもあります。自分で考えたサービスを提供するホテルを建てたい人には、向かないかもしれません。
加えて収益にかかわらず、ロイヤリティや加盟金、システムレンタル料などの支払いも必要です。
ホテルの運営形態には何がある?

ホテルの運営形態はフランチャイズ方式以外にもあります。フランチャイズだけではなく、それぞれの経営方式について知ってから選ぶと良いでしょう。
開業から運営まで全て自力で行う『所有直営方式』
『所有直営方式』は、ホテルのオーナー自らが土地・建物を所有し、経営も行うものです。ホテル経営の方法の中では、比較的スタンダードな形として知られています。
開業前の準備から開業後の運営までをすべて自身で行うため、建物のデザインやサービスの内容などを自分の希望に合わせられるというメリットがあります。
一方、開業のためには多くの資金や時間が必要です。開業後もホテルの知名度が低いうちは、経営が軌道に乗るまでに時間が掛かりやすいでしょう。過去にホテルの経営経験がない場合は、知識を持つ人をブレーンなどに迎えることも必要かもしれません。
建物を外部に貸し出して賃料を得る『リース方式』
『リース方式』は、土地や建物はオーナーが所有し、運営は別会社が行う方式です。自身のホテルを賃貸物件としてホテル運営会社に貸し出すため、もともと土地や建物を所有している場合もおすすめの方法です。
賃貸料収入が得られることから、安定して収入が入るというメリットがあります。ただし、土地・建物は自力で用意が必要です。また、運営会社が見つかったとしても、経営状況によっては撤退される可能性も念頭に置いておきましょう。
運営を外注する『管理運営受託方式(MC方式)』
『管理運営受託方式』は、土地やホテルの所有者と経営者が、外部の運営会社(ホテルオペレーター)にホテル運営を委託する方法です。「マネジメント・コントラクト(MC)方式」とも呼ばれます。ブランド力の高い外資系ラグジュアリーホテルで、よく取られる手法です。
所有者・経営者と運営者がそれぞれ専門的な役割を果たすため、お互いの負担が少なくて済みます。ただし、建物や設備類は自分で用意しなくてはなりません。さらに、ホテル運営に多くの人々が関与するため、意思決定のスピードが遅くなるリスクはあります。
各運営形態を取り入れているホテルの例
各運営形態がどういったホテルで取り入れられているか、具体的な事例を見ていきます。
フランチャイズ方式:アパホテルやスーパーホテルなど
全国展開しているホテルチェーンが多数取り入れている方式です。加盟ホテル数が多く、便利な立地にあるビジネスホテルなどでよく取り入れられています。
フランチャイズ方式を導入しているホテルチェーンには、一例として以下があります。
- アパホテル
- スーパーホテル
- スマイルホテル
- ワシントンホテル
ただし、以上のホテルチェーンのホテルが全てフランチャイズというわけではなく、本部が直接、運営しているホテルもあります。
所有直営方式:帝国ホテル
もっともオーソドックスな所有直営方式のホテルは、規模や立地に関わらず全国に多数あります。一例として、日本を代表するホテル・帝国ホテルが挙げられます。
帝国ホテルは1890年に東京に開業し、以来、名前・場所・業態を変えずに今まで続いているホテルです。現在は『帝国ホテル大阪』『上高地帝国ホテル』など4つのホテルも運営しています。
他にも、『東京ステーションホテル』などの鉄道会社が運営するホテルや、『マリオット』『シェラトン』などの外資系ホテルも、所有直営方式を導入しています。
リース方式:東横INN
『東横INN』は、オーソドックスなリース方式を取り入れているホテルです。基本的に土地の所有者がホテルを建て、そのホテルを東横INN側で丸ごと借り上げるスタイルをとっています。
建てるホテルの構造は統一されており、レストランや売店、宴会場を設けない点が特徴です。
支配人やスタッフも、ホテルのあるエリアから採用しています。これは、東横INN側が地域社会との結びつきを重視し、「オーナーの力を借りながら地元に根付いていく」と考えていることによります。
管理運営受託方式:オークラ ホテルズ & リゾーツ
『オークラ ホテルズ & リゾーツ』は、開業予定も含め国内外に約30のホテルを展開するホテルチェーンです。
実際にホテルを運営しているのは、ホテルオークラの子会社である『オークラ ニッコー ホテルマネジメント』です。同社は土地や建物などを所有せず、ホテル経営にのみ特化したビジネスをしています。
オークラ ニッコー ホテルマネジメントは他にも「ホテルJALシティ」など、7ブランド・国内外約80のホテルを運営しています。各ブランドが誇る「おもてなし」の哲学と、オークラ ニッコー ホテルマネジメントのホテル経営力が活きているからこその運営ができていると言えるでしょう。
フランチャイズ方式での契約方法

現在は建物を所有していないものの、これから取得してフランチャイズ方式を活用してホテルを開業したいと考えている場合のフローを紹介します。
尚、既に土地や建物を所有している場合は若干手順が異なるので注意して下さい。
加盟申し込みをして審査を受ける
加盟に関する説明を聞いてフランチャイザーへ加盟の申し込みをし、ヒアリング・調査・審査を受けましょう。
審査では、ホテル建設予定地の立地条件や広さがチェックされる他、オーナーとなる人の信用調査が行われることもあります。フランチャイザーによっては、審査完了後に合意書の締結や、事前に幾らかの金銭の支払いを求められるケースもあります。
市場調査を行って事業計画を立ててもらう
フランチャイズ契約が成立したら、フランチャイザーが市場調査を行って、詳細な事業計画を立ててくれます。
その内容を確認して、契約を結ぶかを最終決定しましょう。
各種契約を結んで建設工事に着工する
業務委託契約やフランチャイズ契約、設計監理契約、工事請負契約などを締結し、工事に着工する時期や、開業までのスケジュールを決めます。
スケジュールは設計会社や工事会社も交えて決めますが、おおまかな点はフランチャイザーが双方の都合を確認の上、提案してくれます。契約締結から工事の着工までは、最低でも10カ月程は見ておくと良いでしょう。
ホテルを開業して運営していく
工事完了後は開業準備をし、必要に応じてオープニングセレモニーも実施します。
開業後もフランチャイザーからの運営ノウハウの提供、従業員教育や営業活動のサポートなどを受けながら経営していくことになります。
尚、客室の稼働率が悪く売上が上がらない場合も、ロイヤリティや手数料の支払いが発生します。開業後も、堅実な経営を心掛けて下さい。
ホテルの運営形態の選び方
紹介した通り、ホテルの運営形態には幾つかの種類があります。ホテル経営に着手する際は、自身に合う運営形態を選ぶことを重視しましょう。
予算や知識の有無で選ぶ
用意できる予算がいくらかを把握することで、適している運営形態が見えてきます。
開業準備から運営まですべて自力で行う「所有直営方式」は自由度が高く、理想に合わせたホテルの実現が可能です。しかし、時間も費用も掛かるため、経営のリスクも高くなっています。自己資金が少額しか用意できない場合も、適していません。
もし、ホテル経営の知識や経験がないのであれば、フランチャイズ方式が適しているかもしれません。経営の自由度こそ低いものの、フランチャイザーのサポートにより、ノウハウや予算が少なくても運営を軌道に乗せやすくなっています。
ホテル経営の初期費用については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にして下さい。
>> ホテル経営の初期費用はいくら?相場や資金・コストを抑えるコツも解説
建てたいホテルのイメージで選ぶ
開業したいホテルのイメージを固めてから、運営形態を考える方法もあります。
オリジナリティのあるホテルを作りたいのであれば、所有直営方式が向いています。しかし既存のホテルで理想に近いものがあり、そのホテルがフランチャイズ展開しているならば、そこに加盟するのも良いでしょう。
既に土地・建物を所有しているもののノウハウが足りていない場合、まずはフランチャイズ方式やリース方式を選択するのも良いでしょう。
プロに相談して選ぶ
運営方式を選択するのが難しい場合、コンサルティングを受けてから決める方法もあります。ホテルの開業から運営までを支援するコンサルタントや企業は多数ありますが、中でも宿泊業に特化したプロの手を借りるのがおすすめです。
ただし、コンサルタントに依頼するには費用が必要です。また、信頼できるコンサルタントかどうかの見極めも欠かせません。コンサルタントを選ぶ際は、実績や手がけた施設の内容などもよく確認して下さい。
まとめ ホテルの運営形態は多角的に検討して決めよう

フランチャイズ方式でのホテル開業・運営は、ノウハウや経験がない人にぴったりの方法です。資金が少なくても開業しやすく、フランチャイズのブランド力で集客しやすいという魅力があります。ただし、運営の自由度が低いなどのデメリットもあるため、さまざまな運営形態をよく比較して決めましょう。
どの運営形態にしたら良いか見極めが難しい場合は、プロに相談して選ぶ手もあります。「宿力」は、ホテルや旅館向けのコンサルティングサービスを専門に行う会社です。ホテル経営に取り組みたい場合は、ぜひお問い合わせ下さい。