ホテル・旅館(宿泊業)の運営で掛かる経費の内訳を紹介!削減のポイントも詳しく解説

公開日 (更新日 2024.01.25)

経営ノウハウを学びたい方

ホテル・旅館の運営においてはさまざまな経費が発生しますが、その内訳について詳しく知りたい経営者も多いのではないでしょうか。本記事では、ホテル・旅館の運営で掛かる経費の内訳について詳しく解説します。その上で、経費削減が重要である理由や経費削減方法などについても具体的に解説するので、ぜひ本記事の内容をホテル・旅館経営の参考にして下さい。

ホテル・旅館の運営で掛かる主な経費の内訳

ホテル・旅館の運営で掛かる主な必要経費の内訳は以下の通りです。

区分主な経費
スタッフ・求人費 ・教育・研修費 ・福利厚生費 ・給与 ・退職金 ・外注委託費 ・役員報酬
サービス提供・運営・水道光熱費 ・通信運搬費 ・車両費 ・備品消耗品費 ・サービス費 ・衛生費(リネン費・マットなどのレンタル費・事業ごみ処理費など)
食材・飲料・食材の原価 ・飲料の原価
営業活動・広告宣伝費 ・OTA販売手数料 ・営業所費 ・営業交通費 ・接待交際費
施設管理・地代家賃 ・修繕保守費 ・機器リース料 ・組合費・会費 ・保険料 ・顧問料・調査費(税理士・弁護士など) ・事務用消耗品費 ・租税(固定資産税や都市計画税など)

この表から分かることについて、以下で解説します。

運営には多くの経費が発生する

上記の表で紹介した必要経費の内訳を見ると、ホテル・旅館を運営するためには人件費や営業活動費、光熱費や施設管理費など、さまざまな経費が発生することが分かります。安定した経営を継続的に実現するためにも、削減できる経費を洗い出した上で対策をとることが必要です。

経費削減する際は固定費を中心に見直してみるのがポイント

ホテル・旅館の運営においては、宿泊者数が少なくて売上が減っている場合であっても、地代家賃や人件費、水道光熱費などの固定費が発生します。赤字を回避するためには、まず、「固定費に無駄なものはないか」といった視点から支出を見直してみることがポイントです。固定費を削減する具体的な方法については、後程、詳しく解説します。

ホテル・旅館の運営において経費削減が重要な理由

HotelBank(メトロエンジン株式会社)のデータによると日本全国の宿泊施設数は増えていることが分かり、宿泊業界の競争は激化していると考えられます。

参考:HotelBank『日本全国ホテル展開状況(2022年6月現在)

また、ポストコロナの時代においては消費者の価値観も多様化し、宿泊業界は新たなニーズへの対応を迫られる様になりました。例えば、コロナ禍以前の宿泊は非日常的な体験でしたが、ポストコロナにおいては宿泊と居住のボーダレス化が進みワーケーション志向が高まるなど、宿泊施設は日常を過ごす場ともなっています。

この様な時代の変化を受けて新しい施策を打ち出すなど売上を上げる工夫も重要ですが、そのためには新たな経費が発生するため、経営を圧迫する恐れがあります。確実に利益を確保して経営を安定化させるためには、削るべき経費や削れる経費をピックアップし、こまめに削減していくことが欠かせないのです。

ホテル・旅館の運営で掛かる各種経費の削減方法・テクニック

ここでは、各種経費の削減方法について、削減しやすいものを中心に解説します。削減を図れる主な経費は次の通りです。

  • 設備投資・リニューアル費
  • 人件費
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 備品消耗品費(アメニティ)
  • OTA手数料・広告宣伝費
  • 食材費
  • リネン費

設備投資・リニューアル費

設備投資やリニューアルをする際は、活用できる補助金がないかを確認してみましょう。例えば、設備投資には「事業再構築補助金」が活用できる場合があり、枠・従業員数などによって費用の1/2~3/4(100万〜1.5億円)が補助されます。また、「ものづくり・商業・サービス補助金」も改装やリニューアルに活用可能であり、費用の1/2~2/3(100万~1,250万円)の補助が受けられます。

宿泊施設で活用できる補助金については以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にして下さい。
>> 【2023年最新】ホテル・旅館(宿泊業)で活用できる補助金・助成金を紹介

人件費

人件費を削減するには、業務を効率化して最低限の人員で運営できる体制を構築することです。ITシステム(PMSなど)や自動精算機などを導入すれば接客対応する人員を減らすことに繋がり、業務効率化の推進に役立ちます。

また、人手不足を補うために外部委託を利用している場合、人件費が割高になっている可能性があります。必要な人員配置のためには外部委託を適度に利用することも大切ですが、既存スタッフでカバーできる業務まで外部委託しているなど無駄がないか、確認してみましょう。

水道光熱費

水道光熱費を削減するに当たり、スタッフ間で定期的にエコ・小会議を開催して職場全体で節電意識を高めましょう。また、デマンドコントローラーなどIoTによって使用電気量を見える化したことによって節電効果が出たホテルもあります。蓄電池を導入して余剰電力の活用も検討してみましょう。

加えて、電力会社を切り替えてみることも1つの方法です。大手電力会社から新電力会社に切り替えるだけでも電気代の削減に繋がる可能性があります。ただし、昨今の情勢による原油価格の上昇によって新電力などは大きく値上げしている場合もあるため、十分な比較検討が必要です。

通信費

インターネット回線は事務処理に必要となることはもちろん、利用者の満足度向上のために提供するフリーWi-Fiもあり、宿泊業に欠かせないものです。そこで、契約しているインターネット回線の料金プランやプロバイダーを見直すと、通信費の削減に繋がることがあります。特に、かなり前に契約したままのインターネット回線は割高になっている可能性があるため、ぜひ、チェックしてみて下さい。

また、業務効率化を図る目的で自動チェックイン機などITシステムを導入するなら、「IT導入補助金」などの補助金を利用できないか検討してみましょう。

備品消耗品費(アメニティ)

備品や消耗品の経費を具体的に見直し、無駄はないか、省けるものはないかについて検討してみて下さい。

例えば、アメニティを全ての客室に配置するかわりに、必要な分だけをフロントで提供するやり方に変えれば、利用されないまま交換・廃棄されるアメニティの無駄を省くことができます。

また、オリジナルのアメニティはやめて大量生産品に切り替えることでもコストダウンが可能です。加えて、利用客に必要なアメニティをセルフで取ってもらうやり方にすれば、アメニティを客室に補充する人員も減らすことができます。

OTA手数料・広告宣伝費

OTA手数料とは、オンライン旅行代理店経由で獲得した予約に対して支払う手数料です。OTA手数料率は一般的に8%〜15%であり、決して少額ではありません。そのため、OTA経由の予約が多い程、利益を圧迫してしまいます。

そこで、自社公式ページを見直し、リニューアルすることによって、メインとなる集客方法や予約方法を切り替えていくことがおすすめです。

自社予約サイトでの予約を受ければ、OTA手数料が掛からない分、利益を増やせます。また、自社ホームページでSEO(サーチエンジン最適化)などを実施することで、人件費や広告宣伝費の削減にも繋がります。

私たち株式会社キャディッシュは、宿泊予約システム『予約番』や『宿泊施設向けのサイト制作サービス』を提供しています。予約番では、豊富なデザインや決済方法、オプションなどから自社に合うものを選択して設定できるため、手軽にオリジナリティの高い予約サイトを構築可能です。

食材費(料飲原価または料理原価)

宿泊業における食材費は、特に旅館では売上の約20%を占める重要なコスト要因となります。これは夕食・朝食・売店・ラウンジなど、宿の規模によって異なるが、施設内での料飲サービスによるものです。なかでも、夕食と朝食が大きな割合を占めています。飲食店とは異なり、予約商品であるため、稼働率が高い日は大量の食材が必要です。食材の消費期限を考慮しないと、大量のロスが生じ、それが利益を減少させ、経営状態に悪影響を与えます。

食材費の効果的な管理には、2つのポイントがあります。まず1つ目は、食材原価の見直しです。仕入れ料金が高いメニューがあれば、それに合わせてメニューを見直す必要があります。2つ目は食材ロス。ロスを減らすためには、在庫の工夫が必要です。宿泊施設が提供する夕食は通常アラカルトではなく、予めメニューが決まったコースや会席の料理となります。そのため、メニュー構成を工夫してロスを最小限に抑えることが大切です。同様に、朝食などでも工夫を凝らし、余剰な食材を有効活用することが重要です。

さらに、泊食分離を行い、会計を別にすることで、食材費の管理がしやすくなります。一部の宿泊施設では、夕食代金・朝食代金・部屋代金などが厳密に別れていないことがありますが、損益分岐点を考慮して夕食代を設定することで、原価率を明確に把握できます。なお、この方法は会計上の手間がかかるため、多くの宿はPMS(Public Management System)を導入し、宿泊料金の内訳をデジタル化しています。

リネン費

リネン類の納品量については委託業者のプランに一任していることが多いかもしれませんが、実際には必要ない量が納品されている場合もあります。そこで、リネン類が過剰在庫になっていないかをチェックし、在庫の最適化を行う様にしましょう。また、複数の委託業者から相見積もりを取って価格を比較し、より安い業者に切り替えることも大切です。

加えて、連泊用ECOプランの提供も経費削減に繋がります。連泊時のリネン交換を省略することでリネン費を節約できますし、プランを割引価格で提供すれば利用者の満足度も高められます。

ホテル・旅館で掛かる経費の見直しをする際の注意点・影響

ホテル・旅館で掛かる経費の見直しをする際、注意すべき点もあります。以下でそれぞれについて解説します。

サービスの質が低下する恐れがある

経費を削減することでサービスの質の低下を招く可能性もあります。

例えば、ブランド力の高いホテルなどにおいては、オリジナルアメニティの提供を中止することが顧客満足度の低下に繋がるかもしれません。また、サービスを自動化して業務効率化を図ることで、スタッフによる人ならではのぬくもりが利用者に伝わりにくくなる場合もあります。

顧客満足度を損なわない様に注意しながら経費削減を図ることが大切です。そのためには、ターゲットとする客層や、ホテル・旅館のコンセプトを考慮しながら、経費削減の方法を検討する様にしましょう。

無理な人件費の削減はスタッフの不満に繋がる可能性がある

人件費の削減はホテル・旅館経営の安定化において避けて通れない課題ではあるものの、無理な削減のやり方にならない様に注意が必要です。

例えば、給与削減などスタッフの生活に直接悪影響を及ぼす様な経費削減をすればスタッフの不満を招き、労働意欲の低下やサービスの質の低下に繋がります。最悪の場合、退職といった人材の流出を招けば、業務を正常に回せなくなったり、採用活動の手間とコストが増えたりと、経営の悪循環に陥ります。

自社で経験を積み、意欲的に働いてくれるスタッフを大切にし、長く定着してくれる様にすることも、長期的に人件費のコストパフォーマンスを向上させるポイントです。

まとめ    ホテル・旅館で掛かる経費の内訳を把握しておこう!

ホテル・旅館ではさまざまな必要経費が発生します。経営の安定化を実現するためには、発生する経費の内訳や具体的な内容を把握しておき、削減できるところは積極的に削減していくことが大切です。

特に、OTA手数料や広告宣伝費、人件費の削減に取り組むなら、自社公式ホームページを見直し、トレンドに合わせたリニューアルがおすすめです。利用者が使いやすい予約システムや自社の魅力を訴求するホームページを制作し、利用者に直接予約してもらえる様にしましょう。

自社予約サイトやホームページ制作を検討される時は、ぜひ、キャディッシュの『予約番』『ホテル・旅館専門のホームページ制作サービス』をご検討下さい。