ホテル・旅館の閑散期はいつ?具体的な時期や対策から事例までを解説
公開日 (更新日 2024.02.29)

宿泊業界には、年に何度か閑散期があります。閑散期に入ると客室稼働率が下がってしまい、経営が不安定になる可能性があるため、事前に対策をしておくことが重要です。
ホテルの閑散期・繁忙期がいつであるか?や、閑散期にすべきこと・避けるべきことなどを解説します。
目次
ホテル・旅館の閑散期は年に数回ある
ホテル・旅館の閑散期は1年に1度きりではありません。地域にもよりますが、年に数回あるというのは知っておいた方が良いでしょう。
1月~2月
例年、年末年始の休みを過ぎた1月中旬~2月が閑散期にあたる宿泊施設は多い様です。理由としては、以下が考えられます。
- 寒さや積雪の心配から旅行を避ける人が多い
- 年末年始の長期休暇が明け、仕事が忙しくなりやすい
学生も冬休みが明けており、春休みや卒業までは勉強やアルバイトなどに時間を割くことが多い点も、1月中旬~2月が閑散期になりやすい要因です。
ただし、温泉地やスキー場近くなどで、冬の雪景色を目当てに宿泊客が多く来る地域もあります。また、旧正月(1月22日前後)の時期は、アジア各地からの旅行客が増える時期です。
5月下旬~6月
GW明けの5月中旬~6月も、一般的に閑散期に当たります。理由としては、以下が考えられます。
- 祝日がない
- GWに出掛けてしまって外出を控える人が多い
- 雨の多いシーズンで、国内旅行の足が鈍る
ただし、この季節にしか見られない草花の名所があるエリアなどでは、混雑する可能性があります。
曜日によっても多少変動する
曜日によっても、予約の入りやすさは異なります。一般的には月~木曜日は予約が入りにくく、金~日曜日は予約が入りやすい傾向があります。
子供が居る家庭の場合、平日は学校があることも影響しているでしょう。加えて、祝日や連休、会社で定められた長期休暇がない時期も閑散期になりやすいです。
ただしホテルによっても異なるため、目安として見ておくと良いでしょう。
繁忙期も年に数回ある

閑散期とは反対に、多くのゲストが訪れる繁忙期も年に数回あります。閑散期対策のみならず、スタッフの数を確保したりするなど繁忙期ならではの準備も必要です。
夏休み・冬休み・GWなどの長期休暇シーズン
宿泊業界では、以下の時期は繁忙期になりやすい傾向があります。
- 年末年始・冬期休暇
- 学生の春休みシーズン
- GW
- 夏休み・お盆休み
- シルバーウィーク
他にも、桜や紅葉の季節には多くの旅行客がやってくる可能性があります。ただしこちらも、ホテルの種類によって混雑度合いは多少異なります。
例えば夏は、山や海への観光に適したリゾートホテルが満室になりやすいものです。しかし、クリスマス~年末はカップルやファミリーで特別な時間を過ごしたい人が多いため、シティホテルが混みやすくなります。
イベント開催時や受験シーズン
ホテルの周辺エリアで、以下の様な人気が高いイベントが実施されると、ホテルの稼働率が上がりやすくなります。
- 『さっぽろ雪まつり』『ねぷた祭り』『祇園祭』などの有名な祭
- 大型の音楽フェス
こうしたイベントの時期は、地域のホテルがすべて埋まってしまうケースもよくあります。
他にも受験シーズンになると、大学があるエリアでは受験のために宿泊する人が増えて予約が埋まりやすくなります。特にビジネスホテルは受験時に利用されやすく、忙しくなる可能性があるでしょう。
閑散期に向けてホテル・旅館がすべき対策は?
閑散期の空いた時間を活用して、できることもあります。無理に人を呼ぼうとせず、こうした対策に取り組んでみても良いかもしれません。
新しいターゲット層向けのプランを提供する
普段のターゲット層とは異なる層にアプローチするための、新たな宿泊プランを考案するのがおすすめです。新たなターゲット層を呼び込むことで空室が埋まるだけではなく、リピーターになる可能性もあります。
例えば、以下の様なプランはいかがでしょうか。
- ワーケーションプラン
- 日帰りプラン
- 一人で利用できるプラン
- 周囲の施設や観光スポットとの提携プラン
ポイントは、稼働率が高い時期では受け入れが難しい客層を呼び込むことです。例えばファミリー客がターゲットの季節では、一人で静かに仕事をしたい層を呼ぶのは難しいものです。しかし閑散期であれば、実現は難しくありません。日帰りプランも温泉や料理、周辺の観光とセットで売り出すと良いでしょう。
既存顧客へのアプローチをする
既存顧客へのアフターフォローや、季節ごとの連絡を行い、リピートを促す方法も有効的です。考えられる手段は幾つもありますが、代表的なものは以下の通りです。
- お得情報や地域のイベントなどの案内を送る
- 宿泊後の感謝のメールを送る
- 季節のあいさつのハガキを送る
- 既存顧客限定の特典やサービスの提供をする
- Web上の口コミへの返信をする
また、閑散期の間に、現在行っているWeb広告やWebマーケティングの方針に問題がないか、見直しても良いかもしれません。ホームページも集客に影響があるため、定期的に見直してみて下さい。
清掃やWebマーケティング施策の見直しなどを行う
閑散期のうちに、ホテル内の環境整備を行うこともおすすめです。客室稼働率が高い間は、なかなか大がかりな清掃やメンテナンスが行えません。以下の様なことに取り組み、館内の徹底的なメンテナンスをするのも良いでしょう。
- 厨房などの大規模な清掃
- 故障した箇所の修繕
- 掲示物の張り替え
- スタッフの研修
- マーケティング施策の企画立案、ミーティングなど
- 新しい顧客管理システムなどの導入
忙しい時期にできないことを進めておくことで繁忙期への備えとなり、さらに宿泊客の満足度向上に繋がる可能性があります。平常時の客室稼働率アップも、見込めるかもしれません。
閑散期に避けた方が良いことは?

宿泊の予約が減るとつい焦って、さまざまな施策を行いたくなります。もちろんさまざまな試みをするのは良いことですが、中には経費ばかり掛かって効果が出ないものや、逆効果となるものもあるため注意が必要です。
広告を打ち出すこと
絶対的に意味がないとは言えませんが、広告を閑散期に出しても効果は少なめです。
広告はWeb・紙などさまざまありますが、出稿には費用が掛かります。閑散期はもともと需要が少ないシーズンで、広告を出しても効果が望みにくく、費用だけが掛かっていきます。無理な広告は、できれば避けた方が良いでしょう。
もし閑散期にも宣伝をしたい場合には、自社のSNSやメールマガジンを活用しましょう。費用をかけずに、過去の宿泊客や潜在顧客へアプローチできます。
ホテル・旅館の広告については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にして下さい。
>> ホテル・旅館ができる広告とは?おすすめの広告の種類や選び方、運用のコツ
宿泊料金の値下げやキャンペーンを実施すること
集客増を狙って割引や安く泊まれるキャンペーンをすることも、意外と逆効果となるケースが良くあります。
一時的には集客できるかもしれませんが、あまりにも割引をし過ぎると「安価で泊まれるホテル」のイメージが定着し、ブランディングに悪影響を及ぼしかねません。利益率も低下し、十分なサービスができなくなるなど、顧客が離れてしまう可能性も考えるべきです。
もし競合のホテルも同様の施策を行う様になれば、結果的に差別化ができなくなり、値下げ競争に発展する可能性もあります。あまりにも料金を下げると、通常料金に戻した時に宿泊客が離れるかもしれません。どのレベルまで値下げやキャンペーンを行っても大丈夫か、注意深く確認して下さい。
閑散期に対策をして効果が出ている事例
閑散期にさまざまな対策を行い、順調な経営を行っているホテル・旅館も多くあります。ここから紹介する事例も参考に、閑散期の対策を考えてみて下さい。
館内のリニューアル工事を実施「熱川プリンスホテル」
静岡県の人気観光地にある『熱川プリンスホテル』では、閑散期のうちにリニューアル工事を行いました。
工事は、GWの前後に2回に分けて実施。中小企業庁の『事業再構築補助金』を活用しつつ、レストランに個室風のダイニングやカルチャー教室を設置するなど、大規模な館内改装をしたのです。中央館1階には個室風のダイニングを15ブース設け、2階にはカルチャー教室専用スペースを設置しています。
この結果、ダイニングではより顧客満足度を高め、カルチャー教室では、観光客と地域を結びつける講座の実施も実現しました。地元と宿泊客との交流や、地域の魅力発信の場としても活用されています。
オンライン宿泊を実施「WhyKumano」
和歌山県のゲストハウス『WhyKumano Hostel & Cafe Bar』では、Zoomを活用したオンライン宿泊を、コロナ禍の閑散期に実施しました。
Zoomを活用して参加者との交流を楽しむことを目的とした施策で、館内のラウンジにいる気分を味わった参加者も多かった様です。参加費は1,000円で、後日、実際に宿泊する際にワンドリンクがもらえる特典も付けました。
ゲストハウスは宿と顧客、顧客同士のコミュニケーションも魅力としている場合があります。人との縁が希薄になりやすかったコロナ禍において、旅の気分が味わえるこの企画は、好評となったのでしょう。
閑散期の対策を考える際の注意点
閑散期の対策を考える際は、幾つかのポイントを押さえる必要があります。考えている施策が以下の様な点に該当していないか、チェックしてみて下さい。
立地も考慮した集客施策を行う
一概にどのホテルでも同じ対策をすれば良いのではなく、立地条件を考慮することが大切です。ホテルの種類や立地条件によっても、閑散期のタイミングは多少異なってきます。
例えば東京・大阪などの都市部は1年を通じて宿泊予約は安定しやすいものの、観光地はシーズンごとの変動が大きくなります。ビーチリゾートエリアは夏場が忙しく、冬は閑散期に、スキー場などは冬場が繁忙期で、夏は利用客が減ることもあります。
シーズンごとの繁閑が大きいエリアは、メンテナンスのタイミングやスタッフの確保、集客の施策などの工夫が必要です。周辺のホテルも合わせ、どのタイミングで集客が減るかを見極める必要があるでしょう。
繁忙期に影響が出ない様にする
閑散期の対策に力を入れ過ぎて、繁忙期の経営に影響が出てしまっては本末転倒です。
例えば、閑散期に新ツール・システム導入をしたものの、運用に慣れないうちに繁忙期となり、対応や操作に手間取って宿泊客を待たせてしまうことも考えられます。閑散期に始めた工事の工期が伸び、繁忙期に掛かってしまうケースもあるかもしれません。
閑散期の間に離職者が増え、繁忙期に人手不足とならない様な注意も必要です。閑散期はスタッフの研修などに充て、有効に時間を使うのも良いでしょう。
まとめ 閑散期の対策を考えて客室稼働率を上げよう

ホテルは閑散期と繁忙期の差が大きく、時期に合わせた行動や対策が経営を安定させるカギになります。閑散期の対策として単体で考えるよりは、閑散期も含めた通年の対策を考えると良いでしょう。
繁忙期に向けてシステムの見直しや、新規顧客獲得のための企画立案、大規模なメンテナンスも閑散期にしておくことをおすすめします。ただし、メンテナンスなどが繁忙期にずれこまない様に、スケジュールをしっかり立てて行って下さい。
具体的な対策が思いつかない、実施する自信がないなど、閑散期の対策も含めて経営の方向性をプロに相談するのも良いでしょう。『宿力』では、ホテル向けのコンサルティングサービスを実施しています。