ホテル・旅館業界でAIを導入するメリットは?活用例や事例、注意点を解説
公開日 (更新日 2024.05.23)

さまざまな業界でAIの導入が進められている昨今、ホテルや旅館業界においてもAIを導入する施設が増えています。実際に、自社ホテルや旅館へのAI導入を検討しているという方も多いのではないでしょうか。この記事では、ホテル・旅館業界にAIの導入が求められる理由や活用事例を紹介し、それぞれについて詳しく解説します。ぜひAI導入の参考にして下さい。
目次
ホテル・旅館業界においてAI導入が求められる理由
ホテル・旅館業界においてAI導入が求められる主な理由は、次の3つです。
- 人手不足が深刻化している
- インバウンド需要が回復してきている
- 顧客ニーズが多様化・細分化している
それぞれについて以下で解説します。
人手不足が深刻化している
ホテルや旅館では慢性的な人手不足が課題です。特に、シフトを減らさざるを得なかったコロナ禍の期間中にスタッフの離職が増加したため、アフターコロナの現在、人手不足が深刻化しています。
帝国データバンクが2023年4月に実施した調査によると、全業種では51.4%の企業が正社員の人手不足という課題を抱えています。中でも、旅館・ホテル業は業種別でトップの割合を占めており、実際に旅館・ホテル業を営む企業の75.5%において正社員が不足しています。
各部署に配置する人員が不足すれば、その分、現場スタッフの業務負担が増加するなどの問題が生じます。それを解決する方法として、AI導入による省人化が必要なのです。
参考:株式会社帝国データバンク『正社員の人手不足は 51.4%、高止まり続く 「旅館・ホテル」は 8 割に迫る高水準』
インバウンド需要が回復してきている
海外からの入国規制が緩和されたアフターコロナにおいて、インバウンド需要も回復しています。そこで、ホテル・旅館としても、競合が多い中で生き残るための施策として、多言語対応を進めるといったインバウンド対策が欠かせなくなってきているのです。
とはいえ、ただでさえ人手を集めることが難しい中、多言語に対応できる人材を得るのは簡単ではありません。特に、地方では外国語スキルを持つ人材の求人は困難です。そのため、多言語対応としてAIロボットなどを導入し、外国人旅行者のニーズに対応する必要があります。
顧客ニーズが多様化・細分化している
従来、ホテル・旅館業においては、アットホームなサービスが顧客に喜ばれるとされてきました。しかし、アフターコロナでは「非接触」「無人化」の定着に伴い、新しい顧客ニーズが生まれています。例えば、「ホテルへの問い合わせをもっと手軽に行いたい」「周辺観光施設などの詳細情報をスピーディに入手したい」などです。
この様に、顧客ニーズが多様化している中で確実に細かなニーズへ対応するためには、24時間365日、迅速に均質な対応が可能となるAIの活用が求められます。
ホテル・旅館運営でAIを活用するメリット

ホテル・旅館運営でAIを活用する主なメリットは、次の5つです。
- 人件費の削減に繋がる
- スタッフの業務負担軽減に繋がる
- インバウンドの満足度向上に繋がる
- 人ならではの業務に集中できる
- 競合との差別化に繋がる
それぞれについて以下で解説します。
人件費の削減に繋がる
AIを導入して、これまで人が手作業で行っていた業務を代替させることにより、人手不足の解消や人件費の削減に繋がります。
例えば、AIロボットやAI搭載の自動チェックイン機の導入により、フロントに配置するスタッフを削減することが可能です。また、AIコンシェルジュやボイスボットの導入により、問い合わせ業務に対応する人員を省略できます。さらに、汚れた場所に掃除機をかける程度の簡単な清掃業務であれば、画像分析機能を搭載したAI機器に任せることが可能です。
AIを導入して人件費や経営コストを削減できれば、利益を増やすことにも繋がります。
スタッフの業務負担軽減に繋がる
人手が不足している場合は必然的に、各部署におけるスタッフの業務負担が大きくなってしまいます。その結果、労働意欲・作業効率の低下を招いたり、最悪の場合は離職に繋がったりもしかねません。
AIを導入して業務の一部を任せることにより、スタッフの労働環境を改善することが可能です。業務を効率化して作業負担を減らすことができれば、スタッフも余裕を持って業務をこなせる様になり、結果的にはサービスの質の向上にも繋がります。
インバウンドの満足度向上に繋がる
多言語に対応できるスキルを備えたスタッフが不足している場合でも、接客ロボットや多言語機能が搭載された自動応答システムなどを活用することによって、インバウンドへの対応がスムーズになります。
インバウンドは一般的に他国への旅行において不安や不便を感じており、特に、訪日旅行においては、多言語対応の不備やスタッフとのコミュニケーションが取れないことが問題点として挙げられています。多言語対応AIによってコミュニケーションがしっかりとれる仕組みを構築することにより、インバウンドの満足度向上を図れます。
参考:観光庁『訪日外国人旅行者の「困った」が減少!一方、地方部の受入環境には課題も~受入環境整備の促進に向けて、訪日外国人旅行者を対象に、訪問地ごとの状況についてアンケート調査を実施~ | 2020年 | 報道発表 | 報道・会見』
人ならではの業務に集中できる
マンパワーで行わなければならない業務とAIに任せられる業務をしっかりと切り分けることによって、スタッフは業務時間においても心理的にも余裕を持つことができ、結果として人ならではのコア業務に集中できる様になります。
例えば、AIを導入して業務を効率化して人員の稼働にゆとりが生まれれば、スタッフによるお客様のお出迎えなど、人のぬくもりを感じるおもてなし業務により心をこめて従事できるでしょう。その他、売上を拡大するための戦略立案などにも人的リソースを割くことが可能です。
競合との差別化に繋がる
21世紀に入ってからは日本各地で外資系高級ホテルの進出が続いている他、宿泊特化型ホテルでありながらもビジネスホテルと比較してサービス・設備がより充実した施設のチェーン展開も進むなど、ホテル業界の競争は激化しています。
こうした流れの中で競合ホテルとの差別化を図るためには、自社ならではの価値を提供できる様にしなければなりません。そのためには、AIの活用を含めて独自の施策を展開していく必要があるのです。
ホテル・旅館におけるAIの活用例

ここでは、ホテル・旅館におけるAIの主な活用例を4つ、紹介します。
- レベニューマネジメント
- ChatBot(チャットボット)
- AIロボット
- AIカメラ
レベニューマネジメント
AIを活用したデータ分析の例として、レベニューマネジメントが挙げられます。レベニューマネジメントとは、顧客の需要を予測し対応することによって、サービス料金を変動させて利益を最適化するマネジメント手法です。
レベニューマネジメントを実施するためには専門的な知識が求められます。また、膨大なデータを分析・活用・処理する必要があり、人による作業では限界があります。
AI搭載のレベニューマネジメントシステムを導入すれば、タイミングに応じて最適な価格を効率よく導き出すことが可能です。
ChatBot(チャットボット)
顧客からの問い合わせへの対応は、スタッフにとって労力や時間が掛かる業務の1つです。そこで、ホテルへのよくある問い合わせについては、AIを搭載したChatBotに任せることで、問い合わせ対応業務の削減に繋がります。
顧客としても、「深夜早朝でも好きなタイミングで問い合わせでき、すぐに回答が得られる」「スタッフには直接尋ねにくい内容も気軽に問い合わせできる」などといったメリットがあります。そのため、顧客満足度が向上し、予約獲得の機会を逃しにくくなるでしょう。
AIロボット
接客ロボットの「ペッパー」やネコ型配膳ロボット「BellaBot」など、AIロボットを見かける機会は至るところで増えていますが、ホテルや旅館でも普及してきています。例えば、館内・周辺情報などを案内するコンシェルジュロボット、自動で汚れを検知して動作する清掃ロボット、配膳・下げ膳ができる配膳ロボットなどは、ホテル内で活躍しています。
さまざまな業務に活用できるAIロボット製品が多数提供されているので、導入を検討してみると業務の効率化に繋がるでしょう。
AIカメラ
コロナ禍以来、人が多く集まる場所を回避したいという顧客ニーズが生まれ、アフターコロナでも定着しています。そこで、食事会場やロビーなど一定の時間に利用者が集中しやすい場所にAIカメラを導入すれば、顧客は客室内に居ながら、各設備の混雑状況を簡単に把握することが可能です。また、AIカメラを導入すれば警備員の目の届きにくい場所もしっかりと監視・記録できるため、施設内のセキュリティ強化にも繋がります。
ただし、AIカメラを導入するなら、顧客・スタッフのプライバシーにも配慮が必要です。
ホテル・旅館でAIを活用する際の注意点
ホテル・旅館でAIを活用する際の主な注意点は次の2つです。
- 導入時のコストや維持費が掛かる
- イレギュラー時は人による対応が必要
それぞれについて以下で解説します。
導入時のコストや維持費が掛かる
AI搭載のシステムやロボットを導入する際には、一時的に大きなコストが掛かるため、費用を確保しておかなければなりません。例えば、基幹システムのサービスそのものを新しく切り替えるにはそれなりの費用と期間が必要です。
また、AIは学習を継続しながら運用するため、管理・運用を担当する人材を確保したり、システムを維持・バージョンアップしたりするための費用も掛かります。加えて、AI機器の操作についてスタッフへの教育も必要です。この様なランニングコストも考慮して導入を検討しましょう。
イレギュラー時は人による対応が必要
AIに業務を任せるといっても、すべてをAIで完璧に代替できるわけではない点に注意が必要です。
例えば、チャットボットでは質問の意味を正しく理解できず、適切に回答できないケースがあります。また、顧客がAI機器の操作に不慣れでスムーズにサービスを受けられない場合や、AI機器に不具合が発生するなど緊急事態なども起こり得ます。
その様な場合でも顧客を失望させないためには、イレギュラーに対しスタッフが速やかに対応する必要があります。AI導入にあたっては、人による臨機応変な対応も欠かせないことを忘れない様にしましょう。
ホテルや旅館におけるAIの導入事例

ここでは、ホテルや旅館におけるAIの導入事例を3つ紹介します。
- アパホテル
- ホテルオークラJRハウステンボス
- ヒルトン
アパホテル
アパホテルズ&リゾーツは、ホテルの全業務を1つに統合した独自のシステム「APA@ONE(アパアットワン)」を開発し、その一貫としてレベニューマネジメントを積極的に実施しています。
アパホテルのレベニューマネジメントにおいて注目されているのは、「当日の駆け込み需要が一番高く売れる」という考え方に基づく「ダイナミックプライシング」であり、宿泊業界における先駆けです。繁忙期には閑散期の3倍もの価格が付けられる場合もあるなど、利益の最大化を目指しています。
アパホテルでは各施設の支配人に販売価格の決定権があり、他社ホテルの料金や予約状況などのデータ分析に基づいた料金設定を行うことも特徴です。
参考:APA GROUP
ホテルオークラJRハウステンボス
朝食会場の混雑状況を利用者のスマートフォンから遠隔確認できるAIツールを導入したのが、ホテルオークラJRハウステンボスです。同ホテルの朝食会場は130席があるカフェテラスですが、朝食のピークタイムには満席となり、利用者を待たせてしまう事態の解消が課題となっていました。
同ホテルが導入した混雑状況検知システムでは、利用者が朝食券に記載されたバーコードを自分のスマートフォンで読み取ると、朝食会場の混雑状況をリアルタイムで確認できる仕組みになっています。それによって利用者が混雑時の利用を避ける行動を取る様になった結果、混雑の緩和を促すことになり、スムーズな案内を実現できる様になりました。
参考:TRASCOPE-AI『ホテルの朝食会場への混雑状況検知システム導入事例』
ヒルトン
ヒルトンは、IBMと共同開発したオリジナルのロボットコンシェルジュ「コニ―」を導入しました。AI「Watson」搭載のロボットコンシェルジュとしては世界初の例となっています。
コニ―は多言語を理解し、ホテルや周辺施設に関する質問などへの回答が可能です。カウンターに乗るサイズや可愛らしい外見もあり、これからヒルトンの新しいキャラクターとして利用者に愛されていくでしょう。ヒルトン・マクリーン・タイソンズコーナーでは、コニーをいち早く導入しているようです。
参考:Hilton McLean Tysons Corner
ホテル・旅館で積極的にAIを導入しよう
ホテル・旅館業界では、人手不足への対策や業務効率化、多様な顧客ニーズへの対応策として、AIを導入する施設が増えています。AI導入には今回の記事で紹介した様にさまざまな活用例がありますが、自社の課題に合わせた施策を実行できるAIを選んで導入することが重要です。
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